錦織圭(テニス)

錦織圭(テニス)有明コロシアスおよび有明テニスの森で開催中の楽天ジャパンオープンは、5日にシングルス準々決勝が行われ、錦織圭トマーシュ・ベルディハを7-5、6-4で破り準決勝進出を決めた。1973年にジャパン・オープンがATPツアー大会になって以来、日本人選手がベスト4入りするのは初の快挙。錦織は6日の準決勝で、2006年全豪オープン準優勝者のマルコス・バグダディスと対戦する。

試合立ち上がりから、眼の色が違っていた。

「今日の圭は、僕が与えた作戦どうのというより、試合に挑む態度が素晴らしかった」
錦織のコーチは、そう目を細める。

「今日は、1~2回戦と比べて格段に、ボールの感触が良かった。自分から左右に振って攻める形がどんどん出せた」

錦織本人も「結果もそうだが、何より内容に満足している」と噛み締める会心の勝利である。

だが、錦織の集中力と好調さは疑いようがないものの、直ぐに結果に結びついた訳ではなかった。何しろベルディハは、時速200キロ超えのサーブを誇るビッグサーバー。錦織は第1ゲームで3つ、第3ゲームでも3つのブレークポイントを握りながらも、いずれも相手の高速サーブでしのがれる。「取れなかったのは、精神的にも辛いものがあった」そう認める、ある意味で嫌な展開である。だがその一方で、錦織は明るい側面に目を向けた。

「あのようなゲームを続けることで、相手にプレッシャーはかけられたと思う」

前向きな姿勢は、第5ゲームで報われる。相手のフォアが長くなり、ついにブレークに成功した。
 
そのような心身ともに激しい攻防の中、ふと気が緩んだ瞬間があったろうか。4-3からの自分のサーブでは、バックの連続ミスにダブルフォルトも重なり、ラブゲームでブレークを許した。

それでも「今日はリターンが良かったので、常に相手のサーブにプレッシャーをかけられた」と言う通り、今日の錦織には、リターンで相手を押し込むボールの伸びがあった。5-5の場面で、再びブレークポイント。相手のサーブにあわせて錦織が右腕を一閃すると、ボールは一直線にコートを裂く。この日の錦織を象徴するような、鮮やかなリターンウィナーであった。

第2セットは相手に先にブレークを許すが、次のゲームで即ブレークバック。さらには3-3からもブレークし、勝利に大きく前進した。

ここで、本人も「ターニングポイントだった」と振り返るゲームが訪れる。勝利への緊張からか「腕が振りきれなかった」という4-3からのサービスゲーム。この日絶好調のフォアが長くなる場面が増え、5度のデュースを繰り返した。それでも最後は、迷いと緊張を振り切るような、バックのジャックナイフでキープに成功。その瞬間、錦織は勝利を確信したかのように右腕を高々と掲げた。

「圭はボールをライジングで捉え、リターンもとても上手い。カウンターと速い展開で試合を組み立てる、新時代のアガシのような選手だ」

敗れたベルディハは「僕のプレーは良かった」と言い、錦織への賛辞を惜しまなかった。

「今日は、日本のお客さんに一番良い試合を見せられたと思う」

ファンと一体となった熱い夜を全身で感じながら、日本のエースは「明日も、今日のようなプレーをしたい」とさらなる飛躍を誓った。

その他の試合では、昨年覇者のアンディ・マリーが、今大会で初めてセットを失いながらも、圧倒的なコートカバー能力を発揮しスタニスラス・ワウリンカの挑戦を退けた。そのマリーとは、ヤンコ・ティプサレビッチを2時間43分の大熱戦の末に下したミロス・ラオニッチが対戦する。

写真は、楽天ジャパン・オープンの準々決勝で、第2シードのトマーシュ・ベルディハをストレートで下し、4強入りした錦織圭
photo by Hiroshi Sato

楽天ジャパン・オープン

シングルス
準々決勝

錦織圭[8] 7-5 6-4 ●トマーシュ・ベルディハ(チェコ)

アンディ・マリー(英国) 6-2 3-6 6-2 ●スタニスラス・ワウリンカ(スイス)

ミロス・ラオニック(カナダ)[6] 6-7(5) 6-2 7-6(7) ●ヤンコ・ティプサレビッチ(セルビア)[3]

マルコス・バグダティス(キプロス) 6-2 6-4 ●ドミトリー・トゥルスノフ(ロシア)

[ ]内の数字はシード順位