青山修子
ロンドンで開催中のウィンブルドン選手権は3日に女子ダブルス準々決勝を行い、青山修子はシャネル・シェパーズ(29歳、南アフリカ)と組んで、ユリア・ゲルゲス(24歳、ドイツ)/バルボラ・ザフラボバストリコバ(27歳、スペイン)と対戦。7-6(5)、5-7、6-4で勝利し、準決勝進出を決めた。

準決勝進出を決めたのは、青山の時速66マイル(約106km)のセカンドサーブだった。相手のリターンがネットに掛かると、緊張で引き締まっていた顔がほころび、白い歯がようやくこぼれる。スタンドに向かいガッツポーズを固めると、22cmの身長差があるパートナーと固く握手し、勝利の喜びを分かち合った。今回が、通算5回目となるグランドスラム挑戦。154cmの小さな身体で、準決勝の高みまで到達した。

早稲田大学在学中にダブルス選手として開花し、ユニバシアードで金メダルも獲得したが、高校時代までは目立った実績があるとは言い難い。2010年のプロ転向時も「グランドスラムは、自分が立てるとは考えにくい遠い場所」と感じていたと言う。

だが「遠くを見ることなく、一つひとつ着実に進むタイプ」という自己分析通り、ダブルスで国際大会の経験を重ね、確実に実績と自信を積み上げてきた。2011年には、予選を勝ち抜きウィンブルドンで果たしたグランドスラムデビュー。そこでサラ・エラニロベルタ・ビンチ組とフルセットの接戦を演じたことが、決して小さくない手応えとなった。

昨年ワシントンDC大会でWTAツアーダブルス初優勝を果たすと、今年もクアランプールでタイトル獲得。1月の全豪でグランドスラム初勝利を上げ、そして今回のウィンブルドンではベスト4の快挙。ここに来て、積み重ねた実績が一気に花開いた。会見などでの発言は控え目で初々しさを隠せないが、コート上の表情は勝負師のそれになりつつある。準々決勝までの勝ち上がりは、全てフルセット。接戦を物にする勝負強さも、青山/シェパーズペアの強みだ。

この日の試合でも、厳しい試合を勝ち抜いてきた経験が生きた。第一セットは、タイブレークで2-5と大きくリードを許すものの、そこからしぶとく巻き返す。4-6の場面では、相手が痛恨のオーバーネットを犯す運にも恵まれた。集中力が切れた相手を尻目に、ポイント連取でセットを奪い取った。

しかし第2セットに入ると、青山がサーブでリズムを崩してしまった。ファーストが入らず、リターンで叩かれる場面が目立ち出す。第3セットに入ってもリズムは戻らず、最初の2つのサービスゲームはいずれもブレークされた。

だがここで、パートナーのシェパーズが奮起する。青山は「『間違ったことはやっていない。ミスしても良いから思い切りプレーしよう』と声を掛けてくれた」と明かす。その言葉にも助けられ、5-4からのサービスゲームでは集中して入ることが出来た。

「ボールを浮かさないようにし、スライス回転を掛けてボールを滑らすようにした」と言うサーブは、スピードは出なくても相手にとっては返しにくい。自分のやるべきことに徹し、大仕事を成し遂げた。
 
欲を出さず一戦ずつ戦った結果、到達したウィンブルドンの準決勝。「まだ実感はあまりない。次の試合に集中するだけだし、精神状態はこれまでと変わっていない」という謙虚とも思える発言は、大舞台でも平常心を保てる堅牢な精神と表裏一体だ。

「次の対戦相手も、ダブルスの上手い選手。前からどんどん動いてくるだろうから、割りきってしっかりやるだけ」

どこまでも自分のテニスを貫き、歩みを重ねながらテニスの聖地で頂点を目指す。

写真は、試合中、ハイタッチをかわす青山とシェパーズ
Photo by Hiroshi sato