全日本テニス選手権
ひとりの天才の出現によって

 錦織圭の生年月日は、1989年12月29日。もうすぐ25歳を迎える。錦織がプロデビューを果たす直前の2006年に「これだけ選手が塊となって出てくれば誰かが抜け出す予感がある。その先頭に立っているのが錦織。彼が世界へ出て行けば、かならず誰かが後を追うはず」といった記事を書いたことがある。
 錦織のその後は言うまでもないが、彼の周りにいた1988年から1989年生まれ、そして彼を追った1990年から1991生まれのジュニアたちの成長も見逃すことはできない。野球界には「松坂世代」という括りがあるが、テニス界ではまさに「錦織世代」が今の日本男子テニスを引っ張っているのだ。

 今年の全日本選手権もその例に漏れない。1988年〜1991生まれが凄いのだ。シングルスへの本戦出場32選手中、1988年、1989年、1990年、1991生まれは何と16人。半数が錦織を挟んだこの4年間に生まれていることになる。特質すべきは錦織の姿を憧れて見ていた1990年、1991年生まれの後輩たちだ。出世頭は2011年に全日本選手権を制した守屋宏紀(1990年)だが、今大会ではベスト16に、綿貫裕介(1990年)、松尾友貴(1990年)、菊池玄吾(1991年)、関口周一(1991年)、江原弘泰(1991年)と5人が勝ち上がっている。また錦織と同じ1989年生まれの片山翔もベスト16入り。彼らはひとりの天才の出現によって伸びた選手たちと言えるだろう。
 今年の全日本は、錦織より一つ上で1988年生まれの杉田祐一が第1シード。また1992年生まれの内山靖崇が第2シード。これからのサバイバルレースを勝ち抜いて杉田、内山までたどりつく選手は出るか? そこが今後の見所だ。

男子シングルスで本戦入りした1988年〜1991生まれの選手たち
杉田祐一(1988年)
小ノ澤新(1988年)
一藤木貴大(1988年)
佐野紘一(1988年)
奥大賢(1989年)
片山翔(1989年)
長尾克己(1989年)
ロンギ正幸(1990年)
綿貫裕介(1990年)
竹島駿朗(1990年)
松尾友貴(1990年)
鈴木昴(1991年)
菊池玄吾(1991年)
関口周一(1991年)
志賀正人(1991年)
江原弘泰(1991年)

男子シングルスで第3、第4シードが敗れる

 男子シングルスの2回戦で波瀾が起こった。ともにダークホースと見られていた第3シードの仁木拓人(柴沼醤油販売)が小ノ澤新(イカイ)に、第4シードの吉備雄也(ノア・インドアステージ)が江原弘泰(日清紡ホールディングス)に敗れた。仁木を6-1.1-6.3-6で破った小ノ澤は1988年生まれ、吉備を6-2.2-6.6-1で破った江原は1991年生まれ。「錦織世代」の快進撃が止まらない。