日本ではもちろん、アメリカやヨーロッパでも「次のスター」として取り上げられているのが錦織圭選手。「錦織圭がトップ10に入ったとしても別に驚きはない」とTennisWeek誌の記者を始め、多くの人々が高く評価しています。
はたして、その錦織圭選手は2009年も活躍できるでしょうか?
錦織圭選手の活躍を祈りつつ、冷静に状況を分析すると、錦織圭選手の09年での活躍が、そう甘いものではないことが見えてきます。「錦織圭選手は09年に活躍できるのか?」の第1回の今回は、状況の分析を行なってみたいと思います。


※「錦織圭選手は09年に活躍できるのか?」は2部構成です。
⇒第1回「状況の分析と理由」(今回)
⇒第2回「錦織圭選手が09年に優先すべきものについて」

多くの人々の注目は、必ずしもプラスなだけではない

日本ではもちろん、アメリカやヨーロッパでも「次のスター」として取り上げられているのが錦織圭選手。「錦織がトップ10に入ったとしても別に驚きはない」と、アメリカの硬派なテニス報道系週刊誌、「TennisWeek」誌の記者も最近の号で書いています。
しかし、そう簡単にうまくいくとは正直思えません。もちろん、錦織圭選手の活躍を祈ってはいますが、冷静に状況を判断し、分析することも必要です。
 実は、多くの人々の注目を集め、話題になるというのは、必ずしもプラスの効果だけではありません。
錦織圭選手の両袖には、ソニーと日清のスポンサーロゴがあり、その契約金も一説では1社1億円と言われています。10代で100位内という期待の若手とはいえ、これは最近活躍し始めたばかりの選手としては破格の好待遇です。

他の選手にとっての錦織圭選手の存在とは

もっと活躍していてもろくにスポンサーの付かない選手も多いツアーの中で、錦織圭選手の存在がどう写るのか?と考えてみた方がいいとも思います。
かつて、マリア・シャラポワがスターダムにのし上がって言った頃、彼女には包囲網とでも呼ぶべき壁ができました。彼女の対戦相手たちは、他の対戦相手との試合の時よりもずっと集中力を高くコートに入ってきていたものでした。彼女に勝てば、自分の名も上がる、という意味や、単純なやっかみの感情で闘志が上がるという要素もあったでしょう。
錦織圭選手にも、これと同じことが起きる可能性があります。注目されている分だけ、彼は普通の63位の選手として以上に、ライバルたちから研究され、対策を立てられた上で、09年を戦わなければならなくなる可能性が非常に高くなっています。

錦織圭選手への対策

しかも、彼のウィークポイントはサービス。これは多少トレーニングしたからといって、突然劇的に良くなるようなショットではありません。錦織圭選手のサービスは1stでも甘くなれば叩かれ、2ndは狙われ、という具合に、徹底的にプレッシャーをかけられるでしょうし、フォアに回り込む動きや、前に出る動きも逆を突かれるでしょう。また、低いボールではフォア、バックともに角度や深さで対応はするものの、基本的につなぎに回ることが多いのも逆手に取られるかもしれません。
もちろん、オフの間には彼の陣営もしっかりとやってはいるのでしょうが、 いずれにせよ、08年のように自由に錦織圭選手がプレーできる試合というのは、そう多くなくなるはずです。すでに、多くのライバルたちに丸裸にされていると見るのが自然です。
逆に、彼の武器は足の速さと、予測のよさですから、対策を立てにくいという側面もありますし、成長期の選手は一気にすべてがまとまって、08年までとは違った次元のプレーができるようになることもありますから、周囲の期待以上の結果を残す可能性もあります。しかし、こればかりはツアーが始まってみないと、何とも言いがたいものがあります。

今は見守る姿勢がニュートラル

よって、ただ彼の活躍を期待し、煽るような報道があったとしても、そういった姿勢には安易に乗らないことをお勧めします。もちろん、期待するのはいいとしても、乗り過ぎは危険です。錦織圭選手が本当の意味で完成された選手として成長し、ファンを楽しませてくれるのは、恐らくもう少し先だろう、というぐらいの気持ちで今は見守る姿勢がニュートラルな姿勢だと思います。
1990年に、19歳で全米に勝ったサンプラスでしたが、次にGSタイトルを取るまで2年かかりました。19歳当時のサンプラスはまだひょろっとした少年の身体つきのままで、精神面でも大人にはなっていませんでした。19歳でタイトルを取ったことで、周囲からの期待は高まりましたが、サンプラスはしばらくそれに応えられませんでした。
一時はコナーズに、「あいつの精神的な弱さではこの後一生勝てない」などと言われていたことさえありました。その後、どうなったかは皆さんご存知の通り。心身の成長と共に大人になったサンプラスは、30歳でGS14勝目を挙げ、現在のところ、最多GSタイトル獲得選手です。あのサンプラスでさえ、そういう時代を過ごしたわけです。
※「錦織圭選手は09年に活躍できるのか?」は2部構成です。
⇒第1回「状況の分析と理由」(今回)
⇒第2回「錦織圭選手が09年に優先すべきものについて」
ライターXX