ソニー・エリクソン・オープン(米国フロリダ州)は、現地時間24日に大会5日目を迎え、クルム伊達公子と張帥のペアがダブルス1回戦に登場。キング/ニクレスク組と対戦し、6-7、3-6で敗れた。


「メキシコの大会が終わった時、上(の選手たち)にいかに勝っていくかということについて、随分と話し合った」
敗戦の後、クルム伊達は張帥とのダブルスについて、そのように明かした。
昨年の全豪オープンで初めてペアを組んでから、1年と2カ月。その間にこの“日中友好ペア”は、昨年10月のHPオープン(大阪開催)で優勝し、先月のモンテレイ(メキシコ)大会では決勝に進出した。それらの実績もあり、グランドスラムに次ぐ格付けのBNPパリバオープン、そして今回のソニー・エリクソン・オープンの両大会で本戦ストレートイン。クルム伊達は、この一連の成績を「二人の成長」と認めつつも、さらに上に行くにはどうするべきかを、23歳の張帥と徹底的に議論しているというのだ。
その“次の次元への試み”は、今日の試合でもうかがうことができた。これまでのクルム伊達/張帥ペアは、ふたりでネットにつき、ボレーでポイントを奪いにいく陣形を多く用いてきた。だが今回は、片方が後ろに残るパターンなども多く試したのだ。「ふたりの強みと弱みをそれぞれあげ、お互いにどうカバーしていくのかを話し合った上で入ったのが、今日の試合でした」と言うように、この日の試合ではあえて新たな可能性を模索し、ダブルスランク6位のキングと40位のニクレスクという強敵と、第一セットは互角に渡り合ったのだ。
新たな試みがゆえのほころびが生じたのは、タイブレーク序盤だった。1-1となった重要な局面で、後衛に居るよう指示したはずの張帥が、ラリーに引っぱられるように前に出てきてしまう。
「なぜこの大切な場面で!」
クルム伊達が「怒った」と明かす場面だ。このほころびを修復するのは容易ではなく、その後は連続でポイントを失い、第一セットは僅差で落としてしまう。第二セットでは、クルム伊達の絶妙なボレーと、張帥の思い切りのよいストロークが噛み合い、先にブレークに成功するが、やはりコンビネーションが乱れる場面も見られ、第二セットもダブルス巧者のペアに押し切られる形となった。
「今日もこれから、議論ですね」
納得できない場面も多かったがゆえの、クルム伊達の言葉。その悔しさを勝利に変えるべく、重ねられる議論。現状に満足せず、さらに上を目指すこの心構えが二人に共通のものであることは、敗戦後に引き上げる張帥の、険しい表情からも明らかだ。
今年の4月で、現役復帰5年目を迎えるクルム伊達の、まだまだ終わらぬ“チャレンジ”。その果てしなき挑戦には、ダブルスの高みを目指す旅も含まれている。