パリのローランギャロスで開催中の全仏オープンは、現地時間4日に男女の4回戦を行い、女子前年優勝者の李娜(リー・ナ)が、予選あがりのヤロスラワ・シュウェドワに、6-3、2-6、0-6で敗れる波乱があった。


第1セットを取得するのに、李娜が要した時間は38分。強風が吹き抜ける寒空の下でも前年女王は盤石のプレーを見せ、この時点では、世界ランク142位の予選突破者に勝機はまったくないように見えた。
だが突如として、流れは反転する。その理由を問われると、李娜は「理由なんてない。何も悪いこともない。これがテニスだ」といい捨てた。
確かに李娜がいうとおり、第2セットに入ってから、彼女のパフォーマンスが大きく落ちた訳ではない。スコアだけを見れば、第2セット2-2以降はシュウェドワの10ゲーム連取となるが、その10ゲームのうち9ゲームが、デュースにもつれ込む内容。数字上の結果を大きく分けたものは、最後に重要なポイントをどちらが手にしたか……だけである。
その重要なポイントをことごとく手にしたシュウェドワは、いまでこそランキングを下げているが、2年前の全仏オープンでもベスト8に進出している実力者。長身から打ち下ろすサーブと安定したバックを軸に、ストロークでもネットプレーでも戦える、端正なプレースタイルの持ち主だ。
2010年6月の時点では世界ランク29位にまで達したが、2011年初頭に負った膝のケガは手術を要するまでに悪化し、その後も、慢性的な膝の痛みに悩まされた。それでもその間、ダブルスに出場して試合勘は維持しつつ、無理のない範囲で回復に務めてきた。そのような苦しみを乗り越えた2年の歳月こそが、この日の試合でも勝負どころで崩れない精神力を築いたのだろう。下部ツアーや予選などの“ドサ回り”を経てかつていた場所に戻ってきた24歳は、トレードマークの眼鏡越しに、2年前よりもう一歩先を見据えている。