パリのローランギャロスで開催中の全仏オープンは、現地時間5日に男子準々決勝2試合を行ない、第1シードのノバク・ジョコビッチが、地元フランスのジョーウィルフリード・ツォンガに4本のマッチポイントを握られる大苦戦を強いられた。それでもジョコビッチは、その窮地をいずれも攻めの姿勢で凌ぎ、6-1、5-7、5-7、7-6、6-1の逆転勝利で準決勝に進出した。


第3シードのロジャー・フェデラーも、ファン・マルティン・デルポトロに2セットを先取され、後がないところまで追い込まれる。だが、膝にケガを抱えるデルポトルは第4セット以降やや失速。対するフェデラーは徐々に調子を上げ、3-6、6-7、6-2、6-0、6-3の大逆転勝利を収めた。
ジョコビッチ対ツォンガの試合と、フェデラー対デルポトロの一戦は、それぞれ会場内の50メートルほど離れたスタジアムで、ほぼ同時刻にスタートした。数日前までパリを包んでいた暖気は完全に去り、時折小雨も落ちる寒空の下の試合である。
ジョコビッチは試合開始と同時に快調に飛ばし、そしてもう片方のスタジアムでは、デルポトロが198cmの長身から繰り出す強打で、フェデラーを圧倒していた。ジョコビッチは僅か21分でセットを先取。対するフェデラーは、41分で第1セットを失った。
だが両方の試合とも、第2セットは接戦となり、同時に試合の様相も変わりだす。ジョコビッチは、息を吹き返したツォンガに第2・第3セットを連続で奪われ、一方のフェデラーは、第2セットをタイブレークで失いながらも第3セットを簡単に奪い返した。午後6時19分を迎えた時点で、どちらの試合もセットカウントは1-2。
ただし、追い上げられるジョコビッチが窮地にいるのに対し、追い上げるフェデラーは、勝利を射程距離に捕らえていた。フェデラーは、第4セットを1ゲームも落とすことなく奪取すると、最終セットも終始リード。掌握した潮流を最後まで逃すことなく、3セット連取で勝利を奪い去った。
フェデラーが3時間15分の熱戦に終止符を打ったそのとき、ジョコビッチは第4セット5-6の局面で、この日4本目のマッチポイントを強烈なスマッシュで凌いだところであった。遠くに聞こえる、フェデラーの勝利を告げるアナウンス。だがその声は、ジョコビッチの耳には入っていないだろう。彼は拳を硬く握り締めると、噛み締めるように何度も何度も、顔の前で小さなガッツポーズを繰り返す。その後もジョコビッチは、叫び声を上げながらフォアの強打を叩きこみ、第4セットをタイブレークに持ち込むことに成功した。
タイブレークは、一進一退の攻防となる。互いのショットがライン際を叩く長いラリーが続き、そして両者は時にネットに詰め、時にベースラインはるか後方まで下がり必死の守備を見せる。ジョコビッチもツォンガも恐るべき集中力を発揮し、凡ミスと呼べるようなプレーは存在せぬまま、タイブレークでも6-6と並んだ。だがこの場面でツォンガは、2本連続でそれまでに無かったようなミスショットを犯し、タイブレークを、そしてセットを失ってしまった。
試合開始から3時間37分が経過し、セットカウントは2対2のイーブン。しかしこのとき、それまで極限まで張り詰めていたスタジアムの空気が、ぷつりと弛緩したように感じられた。そのことを象徴するかのように、一斉に席を立ち始める多くの観客たち。最終セットでは、やや気持ちが切れてしまったツォンガを叩き、ジョコビッチが試合を決める。試合後、ツォンガはベンチに座ると頭からタオルをかぶり、そのまましばらく動けなかった。
試合展開こそ大きく異なるものの、ともに絶体絶命の窮地を脱し、フルセットの逆転勝利を収めたジョコビッチと、フェデラー。
2日間の休息を挟んだ現地時間の金曜日、2人は再び、準決勝で相まみえる。
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