ニューヨークで開催中の全米オープンは7日に女子ジュニア準決勝を行い、米国カリフォルニア在住の日比万葉は、第2シードのアナ・コンニャに3-6、3-6で破れた。

足早にコートを引き上げる横顔は、今にも泣き出しそうに見えた。今大会ここまで5試合戦い、初めて敗者としてコートを去る。敗戦の悔しさや失意の表情も、初めて観客たちに見せるものだった。

ジュニアの大会に“世界ランキング259位”の看板を引っさげ乗り込んできた日比は、初戦から準々決勝までセットを落とすこと無く勝ちあがり、実戦慣れしたその実力を余すことなく示してきた。切れの良いスライスや柔らかなタッチのボレーは見る者に“古き良き時代”を想起させ、頭脳的なプレーは、テニスが単なる力比べで無いことを再認識させてくれる。ここぞという場面で打ち込む博打的なフォアのリターンも、日比の勝ち上がりを支えた武器だ。

そのリターンが、この日は不発だった。対戦相手のアナ・コンニャはサーブが良く、日比はリターンでリズムがつかめない。第1セットの第3ゲームでは3つのブレークポイントを奪うも、その度に高速サーブに苦しめられた。相手のファーストサーブで16%しかポイントを奪えなかった数字が、リターンでの苦戦を反映する。

一方で自分のゲームでは、ファーストサーブからでもポイントを奪われる場面が目立った。「今日は自分のサーブが悪いというより、相手のリターンの精度が高かった」と日比が認める通り、コンニャは全豪Jr.の優勝者であり、プロランキング284位の実力者。これまで対戦してきた相手と異なるレベルのテニスが、日比の適応力を上回った。
 
「もちろん悔しいですけれど、この負け試合から色んな課題が見つかったので、これからも前向きに練習していきたいと思います」

幾分かすっきりした表情で会見室に現れた日比は、ここ数日に比べ遥かに大人びた表情と口調で、そう言った。

「リターンをもう少し返せていたら、また流れが変わったと思います」

「これからはリターンの上手い選手にも、サーブからアグレッシブに組み立てられるようにしたいです」

的確に敗因を分析し課題を述べる姿には、試合の時同様の知性と冷静さが内在する。過去数試合で見せてきた逆転劇をこの日は演じられなかったが、それについても「逆転の策は考えたが、自分の頭の中に答えがあっても、今の実力では出来ないこともある。それが出来るように練習していきたい」と言う。「頭の中に答えはある」とさらり言える明瞭さが、何とも頼もしく映った。

この2週間、彼女は実に多くの「初めてのこと」を経験してきた。ワイルドカード予選を突破し、全米オープン予選に出て、しかもそこで勝利も得た。ジュニアGSに出るのも初なら、多くの日本メディア相手に日本語で質疑応答するのも初めて。そしてそのいずれにも、日比は目に見える勢いで急激に成長し適応した。

「こんなに多くの日本の方に応援してもらったり、日本語でインタビューしたりと、初めて体験したことが沢山あったので、それは良かったと思います」

伸び盛り17歳には、全ての経験が血肉となる。彼女の旅は、まだ始まったばかりだ。

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