江口実沙 怪我乗り越え挑んだ全米「物足りなさもたくさんある」【全米オープン】

8月28日、USオープン初日。

女子シングルス1回戦で江口実沙（橋本総業）はクリスティナ.プリスコバ（チェコ）に2-6 2-6で敗れた。
クリスティナ・プリスコバ(左利き)は、現女子NO.1のカロリナ・プリスコバ(右利き)と双子の姉。

江口はプロテクト・ランキング（ケガなどで長期離脱した選手への救済措置）で本戦入り。
今大会が初のグランドスラム“本戦”での試合であった。（これまで2012年のフレンチ・オープンから予選には13度挑戦。しかし本戦入りはしていなかった。）

実は江口vsプリスコバは昨年の9月、中国、大連での$125,000 WTAツアーの決勝で対戦している。
この試合、江口にとっては初のトップ100入りがかかっていたが、ファイナル・セット、5-2とリードの時に、左膝靭帯断裂の大ケガをしてしまう。江口は途中棄権。その後は長期離脱になってしまった。

江口のプロテクト・ランキングは109位で、USオープン本戦入りギリギリのランキングだったが、元世界1位のＶ・アザレンカ（ベラルーシ）の欠場で本戦へストレートインできただけに、悔しい結果となった。

明日USオープン2日目は、杉田祐一、ダニエル太郎、大坂なおみ、日比野菜緒、尾崎里紗、土居美咲、奈良くるみの試合がある。

江口実沙インタビュー

――「フレンチよりも嬉しさはあるが、もの足りなさもたくさんある」

「試合は緊張するよりも楽しみだった。楽しくできたら良いと思っていた。変に気負ったりせず、コートに立てたと思う」

江口、緊張しすぎずに試合に挑めたが、「楽しかったか？と聞かれるとそうでもない感じ」と答えた。

「走らされると思っていたし、走らないといけないと思っていた。走れないのを見越して、ドロップ・ショットを余裕を持って打たれた。もっと最初に拾っていたら、取れなくてもギリギリの所まで行っていたら、全然違っていたと思う。勝負なので、相手も厳しい所を狙っていかないといけない」。

「練習の方が動けてた。でも試合になるともっと相手の動きを見て打つので、互いに読み合いになる。１歩でも早く動かないと取れない。特に逆を突かれた時の１歩目が遅かった」。

試合が終わってプリスコバと抱き合った時、「戻って来られて良かった」と言われた江口。
怪我して以来、二人はコート上で初めて会った。

今回グランドスラム“本戦”からの出場で、嬉しさと悔しさが残る試合。

江口は「フレンチよりも嬉しさはあるが、もの足りなさもたくさんある」と言った。

復帰したばかりの時よりも打った感覚はそんなに悪くない。
怪我して車椅子になって、リハビリをして、正直5月のフレンチ・オープン予選の時は「試合に出て大丈夫かな？」と思っていた。
しかし実際には間に合っていなかった。

江口「怪我をしなかったら普通に出られたかもしれないが、出られなかったかもしれない。プロテクトだから出られたかもしれない。複雑な気分です」。

怪我をしていない以前のランキングに戻すのは大変なこと。109位は前にいた頃に戻るモチベーションになると言う。

選手たちは過酷なスケジュールの中、怪我を乗り越え戦っている。江口実沙もそのひとり。この悔しさと物足りなさが、彼女をまた強くする。

――伊達公子の引退発表について

江口「伊達さんも乗り越えるために朝から一生懸命にリハビリしていたのを知っているので、引退の決断は簡単ではないだろうと思った。伊達さんはすごくストイックだから。プレー時はすごくフォーカスしていて、集中力はすごい。
もう一度コートに戻ってきてほしかったという気持ちはある。」

続けて、「森田あゆみちゃんも同じように長い期間リハビリをやっていて、治ってプレーしたらまたダメで、私よりももっと長い。精神的にもきついと思う。満足いくまでプレーしてほしい」。
と答えてくれた。

▽8/29(火曜日) オーダー・オブ・プレー

記事:塚越亘 塚越景子 森下泰　写真佐藤ひろし/TennisJapan

「戻れて良かったね！」と抱擁された江口実沙