フレームの厚みとボールの飛び

★「厚み」は「硬さ」に関わり、「硬さ」は「パワー」に関わる
★マメ知識:厚ラケの始まり
★「上級者=硬くて薄い」は勘違い!!!
★フレームの厚さを選んでみよう!

「厚み」は「硬さ」に関わり、「硬さ」は「パワー」に関わる

「厚み」は弾きのいいラケットかどうかを判断する材料になる

frame_width.jpg厚ラケ・薄ラケという表現を聞いたことがある方も多いはず。この厚ラケ薄ラケは読んで字のごとく、ラケットフレームの厚さ薄さを言い表している。
このラケットフレームの厚みは、自分でフレームを選ぶ際の大切な参考材料になる。と言うのは、フレームの持つ「ボールを弾き返すパワー」を見た目で(ある程度)判断できるだ。

「硬さ」が「弾き」を決める、「厚み」は「硬さ」に関わる
厚いと飛ぶ、やわらかい(しなる)と飛ばない

実際のところ、フレームの厚みがボールの弾きを決める分けではない。
ボールの弾きを決めるのはフレームの硬さである。
ただ、一般には厚いラケットは、その分フレームが硬くなるの。つまり、厚いと飛ぶ、やわらかい(しなる)と飛ばないとなるのだ。

厚さと飛びは比例するわけではない:硬さを決める要因は他にもある

実際カタログ表記上、フレームの厚さは、ボール弾きの良さに比例していることが多い。
だが、「弾き」の要因はフレームの厚さだけではない。ラケット構造の中には、フレームを硬くする要因は他にもある。つまり、厚さ以外のところからもフレームの硬さは調節することが可能なのだ。

マメ知識:厚ラケの始まり

ウッドからメタルへ、メタルからカーボンへ

ラケットは、フレームの素材がウッドからメタル(スチールやアルミ製)に変わり、1970年代にグラスファイバーなどが取り入れられ、その後、現在のカーボン(炭素繊維)製のフレームへと進化を遂げてきた。このカーボンラケットフレームは革命的な進化だった。
当初、カーボンフレームは、フレーム厚は、薄いものばかりであった。ウッド製よりもカーボン製のフレームは製造する時に形状をいろんな形に作りやすいと言うメリットがあるのに何故だったのか。
ウッド時代の名残りもあったかもしれないが、その1番の理由は、硬さにあった。それまでのウッドの素材よりもグラスファイバーは柔らかく、カーボンは硬いと判断されていてた。
プレーヤーは自身の持っている感覚を大切にする。だから始めはウッドラケットの感覚から大きな変化があるのを嫌がった。そして同じ感覚(ウッドラケットと堂々の飛び等)を求めた結果、「薄い」フレームになっていたようだ。

当初の厚ラケは今より飛んだ!?
「Wilson」が出した世界初のワイドボディ(厚ラケ)「Profile」

カーボン・グラファイトの特性を生かして、1987年に皆さんご存知の「Wilson」が「世界初」となる「ワイドボディ」フレーム(Profile)を開発した。この「ワイドボディ」を我々は厚ラケと呼ぶようになる。これが厚ラケの始まりだ。

当初は「飛びすぎ」の厚ラケだった

「ワイドボディ」フレームの出現は、パワーラケットブームのきっかけとなった。ワイドボディ(通称:厚ラケ)は、ラケット自体が「硬く・(ほぼ)しならない」ので、よくボールを弾く。ラケットにボールを当てるだけで、相手コートまで返球出来てしまう感覚だった。
ここから始まり、現在に至るわけだが、最初の厚ラケは「飛びすぎ」。とにかく硬く・しならなかったのだ。
今現在は、どのラケットも程よく「弾き」を計算されて製作されている。カーボン繊維をさらに加工してグラファイト(黒鉛)繊維をシート状にしたり、ブレイド製法と言って筒状に編みこんだりしたものをその特性(高弾性だったり、高強度だったり)で組み合わせたりしてフレームを製造している。

「上級者=硬くて薄い」は勘違い!!!

昔は、「硬い」が上級者。初心者はしなりを利用してボールを飛ばしていた

昔のウッドラケットの時代は、上級者ほど「硬い」フレームを使用していた。初心者はスイングスピードがパワーがないので、フレームのしなりを利用してボールを飛ばしていた。これは今よりもかなりフレーム重量が重く、スウィングスピードも遅い時代の話だ。
たまに年配の上級プレイヤーの方が「硬いラケットがいい」とフレームを物色されることがたまにある。打球感で選んでいるのならいいのだが、「上級者のテニスには薄くて硬いフレームがあっている」と思い込んでいるのなら、少し待ってほしい。

今のトッププレーヤーは、「やわらかい」と「硬い」の両方がいる
少し前のトップ選手は柔らかいラケット

しなると方向性が悪くなると思われがちだが上級者・トッププレイヤーになるとスウィングが安定するので、実際のコントロールには(あまり)影響ないようだ。
また、ツアーモデルのフレームの方が「ガツン」と手応えがあることを硬く感じている方も多いはず。実際の「フレームの硬さ」は機械的に測定しているので、ほぼ例外なくツアーモデルの方が「しなる」ように設計されているのだ。

トップ選手も硬いフレームを使うようになっていく

トップ選手の全員が柔らかいと言うわけではない。最近のスピードとパワーを兼ね備えた近代テニス、以前と比べよりハードなプレイスタイルになってる。トッププレイヤー達もフィジカルを鍛えているが、それだけでは追いつかないほど。ここでラケットの果たす役割は大きい。
女子のウイリアムス姉妹は、非常に「硬い」パワフルなラケットフレームを使い打球をコートにねじ込むようにプレイしている。
また、男子プレイヤーを見ても限界まで身体を鍛えた上で、さらに相手プレイヤーに負けないボールを打つために、以前よりもパワーラケット(厚ラケ)を使用している。お互いにパワーラケットを使用すれば、きっとこうなるということだろう。
AIG OPENでフェデラーが来日した際、実際に彼のプレイを有明で観戦した方はお分かりになったであろう。彼の放つショットをTVで見ている分には解り難いが、生で見るとトンでもなくスピンが掛かっている。
それ程スピンを掛けていても、あのスピードが出る?そんなラケットを選手も使用しているということだ。

フレームの厚さを選んでみよう

ここはあくまで参考程度に見てほしい!

ラケットをあまり振り回せない方に向いているのは?

ボールが良く飛ぶラケットが必要。つまり硬いラケット/厚ラケ
そして、一般には、軽量・大型フェイスのラケットが多い。

ラケット自分でブンブン振れるなら

飛びすぎないラケットが必要。つまり柔らかいフレーム/薄ラケ
スピンをグリグリ掛けることが出来て、ボールをコートにねじ込めることが出来るなら、多少「厚ラケ」でもかまわないかも知れない。(前出のトッププレイヤーの例から)

ラケットを手に取ろう
カタログを参考程度に見る

前述したが、ラケットメーカーのカタログやフレームに表記してある「パワーレベル」(各社違う表現)は、フレーム厚が厚くなるほど大きな数字になっている。表記上、フレームや厚さは、ボール弾きの良さのレベルと考えて良い。

試打する際に頭に入れておきたいこと

やはり実際に打ってみて自身にあっているものを選びたい。だが、トップ選手が薄いラケットを使用しているという先入観は、それに大きく影響を与える。だから次のことと頭に入れておいてほしい。
硬いラケットを選ぶ選手が増えてきたということ。
硬いラケットはフレームの厚いラケットが多いということ。
薄いラケットを使用する選手も多いということ。

フレームの厚みと打球感の違い

こちらをご参照下さい。
記事:村上 功