先日、伊達さんのウィンブルドン本戦出場という嬉しいニュースがありましたね。復帰して1年あまりでここまで来てしまうのは本当に驚きです。自力ではなくWCでの出場ですが、ランキング的にカットまであと少しという成績があり、過去のSF進出者という実績もあるので本戦でプレーするのは相応しいと思います。日本人はもちろん、イギリス人の多くもグラフとの2日がかりの死闘を覚えているでしょう。
私はSSCの時に伊達さんのヒッティングパートナーをさせてもらいました。グラフ、ナブラチロワ(最初はサバティーニでしたが、途中で変更)とのエキジビションマッチでの復帰が決まった時です。エキジビションに向けての伊達さんの取り組み方はプロそのものでした。正直、たった1日のエキジビションマッチのためにここまでする必要があるのかと疑問を感じてしまうほどでした。伊達さんとしてはグラフやナブラチロワがどれくらいのコンディションで来るか分からないので、当日に焦らなくてもいいように最高の準備がしたかったのでしょう。
最初はさすがにブランクもあり、テンポの速さは昔通りでしたが、ボールがちらばりミスも多かったです。しかし、そんな時は自分が納得するまでは絶対にそのドリルは終わりません。どんなに息が上がっていても、苦しそうでも、伊達さんがラケットを構え、ファイティングポーズを取っている間は終わらないのです。ここまで自分を追い込める人はこれまで見たことがありません。
このプロ根性こそが世界のトップへと導いたのだと思います。それを見せたくて後半は宏紀と練習してもらいました。男子とか女子関係なくあのプロ根性は見習うべきだと感じたからです。思惑通り、宏紀は最初、伊達さんのオーラというか、迫力に押されていました。そして、リスペクトすることで自分もこうならなければという見えない何かを掴んだと思います。
エキジビションマッチはご覧になった方も多いと思いますが、当日は他の2人と比べることが出来ないくらいのコンディションの良さで、全く相手になりませんでした。フルパワーを出せばぶっちぎってしまうので、セーブしてセーブして戦っていました。かなりの不完全燃焼だったと思います。この不完全燃焼がもっと思い切りプレーしたい、自分の力が今どれくらいか戦ってみたいという気持ちを増幅させたのでしょう。その後のスケジュールにはしっかりと試合の予定が組まれていました。本格的な復帰の始まりです。
それ以降の活躍は皆さんもご存じの通りですが、私にとって復帰への道のりをお手伝いさせてもらったことは大きな財産となりました。是非、ウィンブルドンでは勝利する姿を見てみたいです。