橘龍平選手

『ユニクロ全日本ジュニアテニス選手権』車いす部門の記念すべき初代チャンピオンに輝いた橘龍平選手。ファーストリテイリング財団が贈呈する副賞の海外遠征(フロリダ)では、国枝慎吾さんや錦織圭選手らトップアスリートとの交流から勝負強さやマインドを深く学びました。現在は薬学部に通い、「スポーツファーマシスト」として選手を救う薬剤師を目指しながら、競技との両立に挑む橘選手のひたむきな成長と挑戦についてお届けします。

Q 全日本ジュニア「車いす部門」の第1回大会に出場が決まった経緯と、その時の思いを聞かせてください

 日本ランキングや世界ジュニアランキングで日本人の上位に位置していたことから、出場が決まりました。「初代チャンピオン」というタイトルは、この先も歴史上に一人しかいません。だからこそ、そこをしっかり狙いに行きたいという強い気持ちがありました。

Q 実際に有明のコート(コロシアム)に立った時の気持ちや、優勝の瞬間はいかがでしたか?

  決勝の日のコロシアムは、普段の練習や大会とは全く違う空気感で、すごく楽しかった記憶があります。マッチポイントで自分がサーブを打ち、相手の返球がアウトになると分かった瞬間、一気に大きな喜びが押し寄せてガッツポーズが出ました。

Q テニスを始めたきっかけについて教えてください

 僕は生まれつき障害があり、小学1年生の頃から車椅子を使い始めました。そのタイミングで、たまたま同級生のお兄さんが車いすテニスをやっていて、誘われたのがきっかけです。もともと体を動かすのが好きで、自分が打ったショットが決まる気持ちよさや、車いすテニスは健常者の方とも一緒に普通に打ち合える楽しさに魅了されました。

Q 健常者もトップ選手が集まる全日本ジュニアで優勝したことは、ご自身にとってどんな意味を持ちましたか?

 国内最高峰の大会と同時に開催され、その第1回で優勝できたことは本当に特別でした。会場が一緒だったこともあり、健常の選手たちの迫力あるプレーを間近で見て、「これからの自分のプレーに取り入れてみたい」と強い刺激を受けました。

 Q 大会期間中に大変だったことや、プレッシャーはありましたか?

 フィジカルだったりメンタルだったり、試合の日に絶対に良い調子とは限らないので、そこで悩むことはありました。当時は「絶対に勝たなきゃいけない」というプレッシャーに加え、高校の受験勉強との両立にも悩んでいました。でも負けず嫌いなので、「その日のベストを尽くせば絶対に結果はついてくる」と信じて最後まで戦い抜きました。

Q  副賞の海外遠征(フロリダ)は良い経験になりましたか?

 はい。テニスのための最高の環境で、国枝慎吾選手や錦織圭選手、USオープンジュニア優勝者など、素晴らしい選手たちとヒッティング(打球練習)させていただき、大きな衝撃を受けました。また、メンタル面で全日本期間中も悩んでいた部分もあったのですが、この海外キャンプで変わったかな、と思います。

Q 国枝さんや錦織選手からは、どのような学びやアドバイスがあったのでしょうか?

 メンタルコーチからは「試合中は常にニュートラルなメンタルを保つこと」を教わりました。また、国枝選手からは「どんな劣勢でも『ここからどうひっくり返すか』を常に考えればフラストレーションは溜まらない」とアドバイスをいただき、自分のテニスに大きく影響しました。

錦織選手からは、走らされた時のフォアハンドの技術指導や「ジュニア時代、格上の選手に勝つまで何度も試合をお願いしていた」という話を聞き、トップで戦うための「負けず嫌い」の大切さを学びました。国枝選手のボールは、他の車いす選手からは感じたことのない圧倒的な重さと跳ね上がりがあり、打たせていただいたのは一生の思い出です。

国枝慎吾選手からアドバイスをもらう橘選手。写真/FR財団

Q 卒業後の進路として、「薬剤師」を目指している理由を教えてください

 日本車いすテニス協会の合宿講義で、アンチドーピングに詳しい「スポーツファーマシスト(薬剤師)」という存在を知りました。意図しないうっかりしたドーピングで選手生命が絶たれてしまう方を一人でも多く救いたい、という思いが芽生えたのがきっかけです。自分自身もテニスを続けていきたいので、学業と競技の両立を目指しています。

Q 大学(薬学部)での勉強とテニスの両立は大変かと思いますが、今後のプランは?

 平日は大学の講義が終わった夜や土日を活用して練習時間を確保しています。フロリダで国枝選手から「どちらかに絞らなくてもいい。両立できるように頑張れ」と背中を押していただいたので、その言葉を胸に、薬学部で勉強しながら国内ツアーや国際大会でも活躍できる選手になりたいです。テニスを通じて学んだ諦めない心やコミュニケーション能力は、将来どんな道に進んでも自分の力になると確信しています。

Q 最後に、今年全日本ジュニアに挑む選手たちへメッセージをお願いします!

 全日本ジュニアは、日本の中でもすごく大きな大会ですし、世界へ羽ばたく第一歩となる大会だと思います。ぜひ優勝を目指して、自分のベストを尽くして頑張ってください。応援しています!

海外キャンプに行ったメンバー。写真:FR財団

取材・構成/Tennis.jp