
ジャパンオープンで現役最後の公式戦を終えた錦織圭(ユニクロ)の功績をたたえるイベント「UNIQLO LifeWear Day Tokyo 2026 with Kei Nishikori」が11日、東京・有明コロシアムで開催された。ここではイベント終了後に行われた錦織圭の会見の内容をお伝えする。
■ 錦織圭引退会見・冒頭挨拶
今日は皆さんお時間を使ってお越しいただきありがとうございます。 引退を発表したのは1週間ほど前で、結構色々喋ってきたので、まだ言うことがあるのかなと思ったりはしているんですけど(笑)、今回こうやってユニクロさんにこのような素敵なイベントを開いてもらって、またこう引退することがより実感が湧いて、そして同じ選手であったロジャー(・フェデラー)だったり、(国枝)慎吾さん、ゴードン(・リード)に色んな言葉をかけてもらって、結構感慨深い気持ちで今を迎えてはいるかなと思います。
日が経つにつれて、自分が真剣勝負の試合をもうできなくなるっていうのは日々に感じて寂しさもありますし、でも「これから何ができるかな」「何が起こるかな」っていうワクワク感も同時にあったりするので、今は色んな気持ちがぐるぐる回っていて難しい日々を過ごしてはいますが、この期間を経てまた自分の中で成長していけたらいいなと思っています。

■ 質疑応答
──錦織さん自身として挑戦したいこと、やってみたいこと、テニスに限らず今やってみたいことがあれば教えていただけますでしょうか?
錦織: 今のところ本当にプランが全くなくて。何かこれから探していきたいなというのと、本当に終わったばかりなので、今まではずっと自分のために24時間過ごしてきて、それがこう少し変わっていくのかなとは思うので、何か探していけたらいいなという段階です。
今までできなかった……先日引退して2日目くらいにやったのは、ランチを頼んで、なんとデザートを2つ頼むとか(会場笑)、そういった今までできなかったちょっとした幸せを自分の中で見つけながら、あとは日本で免許を取るとか…、これからやりたいことは探していきたいなと思っています。
──改めてテニス界で「錦織圭」という存在がいなくなった時に、「第2、第3の錦織圭」が出てくるために、今率直に今後どういったことが必要だと感じていらっしゃいますか?
錦織: これは自分の中でも解明していくのは課題ではあって、結構色んな選手と日本人の中で話しながら探してはいるんですけど、やっぱりどうしてもテニスの場合は主戦場がヨーロッパだったりアメリカだったりが主なので、どうしてもここ(アジア)からヨーロッパにトラベリングするとか、海外の選手と練習をする、そしてまたメンタルを強くするために海外の選手とやらないといけないって考えた時に、やっぱりアジアにいるのはすごく不利で。アジアでの大会もありますけど、どうしてもレベルがヨーロッパ・アメリカと比べても、同じ賞金だとしてもちょっとレベルが低い中で成長できるかって言われると、なかなか今は難しいところがあるのかなとは正直思ってはいるので。
一番手っ取り早く成長するためには、やっぱり海外に出て、自分がやったように……まあ大変ですけど、お金もかかるし、全員ができることではないのはわかっているので、そこを自分が手助けなのか、何かできたらいいなとは思っています。やっぱり現状、日本で育ってプロでやっていくっていうのは男子の場合は特に難しい現状なのかなとは思っています。
──これから世界に挑戦していく日本の若い選手たちに向けて、今伝えたいことがあればメッセージをお願いします。
錦織: そうですね、日本の場合は本当に運が良いことに、すごく強いジュニアの選手、才能のある選手がたくさんいると思っていて。ジュニアの頃はやっぱり体格とか、テニスの技術とかでなんとか戦える部分があったりするので、成長するにつれて心技体のメンタルが必要になってきたりするんですけど、日本のジュニアは強い選手がたくさんいるので、やっぱりこれをどうにか活かさないといけないです。
僕は若い頃は特に、質も大事だけど、本当にたくさん練習をしないと強くはなれないと思っているので、そこの努力という部分では小さい頃からやってこないと厳しいのかなと思うので、自分に鞭を打って、自分ができる最大限の努力を1日1日やっていくっていうことが、どのスポーツにしても大切なのかなと思います。
──テニスをやってきて、テニスと共に生きてきたからこそ自分はこういう人間になれたとか、得られたものというのは何でしょうか?
錦織: そうですね、本当にずっとテニス……良い意味でも悪い意味でもテニスしかやってこなかった中で、色んな人に出会って、色んな人と対戦して成長できた部分もすごく多かったですし。
やっぱり「テニスとは何だったんだろう」って考えた時に、自分のめちゃくちゃ長いこの青春時代をテニスに全部注げたなってすごく思って。これは地球上の全員ができるわけではないですし、こうやって1つのことに自分の人生の全てを込めるっていうのは、つらいこともあったし、楽しいこともあった中で、これに没頭できた時間っていうのは本当に幸せだったなって改めて思うので。
色んな経験を得て自分も強くなったし、特に怪我をたくさんしていた中で、怪我から復帰するためにどれだけの地道な生活をして、また強くなるために頑張れたかという時間っていうのは、自分をすごく成長させてくれたと思うので。もちろん怪我がなければそれはそれで良かったんですけど、怪我をして得たこともたくさんあったと思うので、こういう気持ちだったり、自分が経験してきたことを、特に若い世代にシェアできたらいいなと思っています。

──歴史的な偉業を成し遂げ、アジア人として最高のテニスプレーヤーとなったあなたですが、現役を終えた今、日本の人々やテニス界にどのように記憶されたいですか?また今後の目標は?
錦織: アジアのナンバーワンプレーヤーになれたことを大変光栄に思っています。私自身、修造さん(松岡修造氏)をはじめ、多くの素晴らしいアジアのプレーヤーたち、もちろんマイケル・チャンコーチや日本の先輩方を見上げて育ってきました。若い世代が私を覚えていてくれ、同じように続いてくれることを願っています。
私の願いは、アジアのテニス界がより大きくなることです。トップ10にいたのが私一人だったように、簡単なことではないと分かっていますし、厳しい状況ですが、より多くのプレイヤーがトップ50やトップ30に入れるよう、将来何らかの形でサポートできればと思っています。それがこれからの私の目標になるかもしれません。
──先日の引退セレモニーの際、歴代のコーチやチャンさんアカデミーのコーチなど色んな方が見届けていらっしゃいました。改めて盛田正明さんが与えてくれたチャンスへの感謝や、当時の思い出についてどう考えていらっしゃいますか?
錦織: はい、僕がこのキャリアを終えるにあたって、本当にたくさんの人にお世話になりましたし、その中でも4〜5人くらい、一番影響を与えてくれた中に、やっぱり盛田会長はいて…。
僕はアメリカに行くチャンスをもらったことですごく成長できたし、特に島根で生まれて13歳まで育って、やっぱりテニスが強くなるためには島根から出ないといけないと親も含めて思っていた中で、アメリカに行くチャンスをくれた人でした。会長は結構厳しいことも言ってくれるので、それに勇気づけられながら頑張れたという思いもありますし。
やっぱり1つ悔いが残るとしたら、もうちょっとグランドスラムの優勝のトロフィーだったり、何か大きなトロフィーを会長に見せてあげたかったなという思いは、今でもずっとありましたね。今回ご挨拶に行かせてもらって、本人にも伝えたんですけど、「それ以上にやってくれたことは大きいから、そんなこと思わなくていいよ」って言ってくれて、すごく肩の荷が下りた気持ちになりました。
──ロジャーが「新しいことに出会って視野を広げてほしい」と言っていましたが、ロジャーのように世界を回ってテニスを伝える、ナダルのようにアカデミーを作る、フェレーロのように強い選手を育てるなど色々あります。今ロールモデルになるような理想の引退後の姿はありますか?
錦織: それはすごく刺さっていて、僕も引退してからそういう思いはあって、色んな人に会ってみたいです。今まではずっとテニスをやってきて、あんまりたくさんの人に出会う機会がなかったので、基本的には家に過ごすことが多かったですし。
でもやっぱりこれから色んなことをするにあたっても、色んな人の話を聞いて、会って意見を聞いていくのはすごく大事なことだと思うので、自分が得意なことではないですけどやっていきたいなと思っていて。
フェレーロみたいに終わってすぐジュニアと遠征を回ってしっかり教えてっていうのは、今は100%はできないですけど、やっぱりいずれアジアの選手にトップに行ってほしいな、テニスに関わりたいなという思いは少なからずあるので、それがどういう形で自分ができるのかを探していきたいですし、それが日本でアカデミーやテニスクラブをやるのか、自分が盛田会長に海外に行かせてもらえる機会をもらったので、そうやってジュニアに貢献していけるような仕組みを作っていくのか。
やりたいことは将来的にあるなと思うので、じっくり何が正解で、何が一番早く日本のジュニアを強くしていけるかを色んな人に相談しながら探していきたいなと思います。
──ご自身の挑戦の到達度としてはどれくらいだったか? 残りの部分には何が必要だったかお聞かせください。
錦織: あんまり言いたくないですけど、50点くらいですかね(笑)。100と言いたいところですけど。やっぱり僕は幸いにも早く海外に出て戦えていたと言いましたけど、世界のトップ選手を見て育ってきたので、日本ナンバーワンになるとかアジアナンバーワンになるとかはあんまりうれしくなかったですし、やっぱりトップを目指していたので、そこを考えたこともあまりなかった中で、さっきフェデラーに言われて「確かに俺はそこは頑張ったんだな」と自分ながら思ったんですけど。アジアで目標とする選手がいない中でそれを押し上げていけた、この体格でできたというのは、そこは評価できる部分ではあるかなと思います。
ただ、やっぱり自分の目標としていた1位だとか、グランドスラム優勝だとか、せめてマスターズ(1000)を1つ取りたかったなというのは、そこはものすごく悔いが残っていて。色んなマイケルだったり選手に話すんですけど、そこは自分の中で他の選手に対してちょっと劣っているなという部分ではあったので、みんな「そんなことないよ」って言ってくれるけど、自分の中ではそこはどうしても悔いが残るところですね。
──最後に一言、ファンの皆様へメッセージをお願いできますでしょうか?
錦織: えっと……そうですね、今まで応援してくれてありがとうございました!(会場笑)
やっぱりこう、日本人としてこうやってテニスを話題にできたこと、そしてたくさんの人がテニスに興味を持ってくれて応援してくれて、自分もここまで頑張れたと思ういます。
僕と、最近では大坂なおみちゃんも日本を背負って一緒に戦ってきて、もうちょっと日本でテニスを大きくしたかったなという思いはありますけど、これからまた坂本怜くんだったり新しい選手が出てきている中で、そのサポートを、テニスもそうですし、スポーツというものが、やっぱりまだヨーロッパとかアメリカに比べると、スポーツはものすごく大きな価値があるので、それをもっともっと日本でも上げていけるような働きかけができたらいいなと思っています。
構成:保坂明美 写真:伊藤功巳


