2012年シーズン開幕を告げる全豪オープンが16日、オーストラリアのメルボルンで始まる(予選は11日スタート)。男子の場合は昨季の最終戦からおよそ1ヶ月程度のオフを挟むだけでスタートするため、特に上位陣は昨季終盤の流れをそのまま引きずりやすい。
また、伝統的に中堅からベテラン勢が活躍する傾向があるのは、彼らの方が若手に比べて本番までの調整力が優れていることが理由としては考えられる。また、一般には「番狂わせが多い」というイメージもあるようだが、これは年によって前年からの流れの中で判断しなければならない。前年終盤の上位陣の流れが悪く、そのままの状況で本番を迎えた場合、比較的長めの調整期間を取れる中位勢以下の勢いが勝るというケースがあるからだ。年が改まり、気分としてはゼロからのスタートのように外部からは見えていたとしても、日付はしょせん数字であり、ツアーは常に連続しているものという認識は持っておく必要がある。
今季の場合、昨季終盤で調子を上げた状態で終えたのがロジャー・フェデラー(スイス)だ。彼も30歳となり、昨季は2002年以来初めて1つもグランドスラムを取れないシーズンとなってしまったが、実力そのものはタイトルに手が届くレベルを維持しており、体調十分で本番を迎えられれば、優勝候補の筆頭に挙げてもいい。
逆に昨季はGS三冠、圧倒的な勝率でナンバー1の座についたノバク・ジョコビッチ(24歳、セルビア)は、全米で傷めた脇腹と腰の状態次第。年末のアブダビのエキジビションマッチで早速始動しており、調整そのものは順調の様子だが、彼の強さは彼のフィジカルに負う部分が大きいため、状態が悪いままだと上位相手にはごまかしが効かない。本人は強気のコメントをしているようだが、開幕前の時期というのは誰もが同じように前向きなコメントしか出さないもの。1週目の勝ち上がり方や、2週目で当たる上位陣との対戦でその状態を判断したいところだが、不安含みの全豪となりそうだ。
デビスカップ(デ杯)を決勝まで戦い、1ヶ月未満のオフしか取れていないラファエル・ナダル(25歳、スペイン)はさらに不安が大きい。左肩に違和感があるようで、早くも全豪後の2月は休養に当てると年末の時点ですでに発表している。彼がこうしたコメントをブラフ的に使うことは滅多になく、本当に状態が悪いのだと判断していいはずだ。2010年の彼の活躍は、サービス力の向上にあったが、その反動が来ている頃なのかもしれない。デ杯決勝での勢いを持続できていればいいが、プラス要素はない状況だ。
アンディ・マリー(24歳、英国)の場合、昨季の終盤で傷めた臀部と股関節の回復次第だが、故障部位が悪い。オフの間には上半身のトレーニングができていれば上々と見るのが妥当だろう。特別上積みができない状態で本番を迎えるとなれば、課題のメンタル面のチューンナップも不完全となりかねない。前哨戦である程度結果を出した上で本番に臨むか、大会序盤でいい勝ち上がり方をしておきたいところだろうが、やはり状況的にはイエローだ。
ダークホース的な存在は数多くいるが、ジョーウィルフリード・ツォンガ(26歳、フランス)には注目したいところ。全豪では2008年に準優勝の実績もあり、昨季の後半もまずまずの状態を維持していた。前述した通り、「4強」で万全そうなのはフェデラーだけという状況であれば、5位以下で光るのはやはり彼の破壊力と勢いになる。1週目を楽に突破できているようなら、一気に決勝まで来る可能性は高い。
他にもデ杯決勝では苦杯を舐めたフアンマルティン・デルポトロ(23歳、アルゼンチン)が、逆襲体制を整えられていれば、優勝に絡んでくる確率は高いだろう。また、地元の期待を集める
レイトン・ヒューイット(30歳、オーストラリア)が、準備万端で大会に主催者推薦出場してくる。正直、今の彼に優勝に絡む活躍を期待するのは酷だが、生粋のファイターである彼と当たる上位陣にとっては危険な存在になるはずだ。
今年の全豪は、各選手たちの状況が様々で、いわゆる番狂わせが多い年になる予感が漂う。意外な活躍選手が生まれる可能性は高く、その意味でも楽しみな大会と言えるだろう。
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