2012年シーズン開幕を告げる全豪オープンが16日、オーストラリアのメルボルンで始まる(予選は11日スタート)。錦織圭(22歳)は本戦出場どころか、今回は堂々のシード選手としての出場となる。彼の26位というランキングは、4回戦以上がほぼノルマと言えるランキングだが、シード付く分だけ、上位選手との対戦は早くても3回戦以降となるのをプラスにしたい。
本人は「トップ10も見えてきた」と各所で口にしているが、その言葉を実現するためには、この全豪ではまずベスト8を狙いたい。しっかりと守った上で相手から攻め手を奪い、自在に攻めて行くという彼のプレーは王道でいて、攻撃の多彩さには彼ならではの独創性がある。
今は戦術面で相手の方が上という選手には苦戦しているが、正面から打ち合いを挑んでくる選手に対してなら、上海でツォンガ相手にも勝っているだけに、ベスト8も非現実的な目標とは言えない。期待しつつ見守りたいところだ。
また、直前になって、伊藤竜馬(23歳)の主催者推薦枠での本戦ストレートインが決まった。今季初戦となったブリスベンでは予選を勝ち上がり、2回戦に進出するなど好調。爆発力のある選手なだけに、相手次第では一気に大ブレイクも期待できる。
森田あゆみ(21歳)にとっての全豪は正念場。昨年は3回戦まで勝ち進んでいるだけに、最低でも同程度までは勝てないと大きくポイントを失う。しかし、昨年の3回戦進出は正直に言えばラッキードローを生かした形で、今年もドロー次第という要素はあるものの、今季の森田がどんなテニスを見せてくれるか純粋な興味もある。強打によるスピード勝負だけでなく、柔軟な展開力を見せられるようになっているかどうかが、今季の彼女にとっては実は結果以上に大切になる。彼女の試合では勝敗はもちろん、試合内容にも注目しておきたい。
さて、クルム伊達公子(41歳)だ。彼女の強さを形作るのはその対応力。どんな強豪相手にも勝ち負けを演じられるのは、相手のテニスやボールに対して瞬時に対応し、試合の中で次々と対策を立てては実行していく能力が高いから。これが彼女をかつて世界4位に押し上げた最大の力だ。極論すれば、ライジングや走力の高さはそのために必要なパーツと言ってもいい。
彼女の場合はまず、体調を整えて1回戦を迎えられるかどうか。体調の状態はメンタルに影響し、自信の有無は判断力に影響する。彼女の武器である対応力が発揮できれば、どんな相手でも勝ち目を作り出せるはずで、能力的には今も2週目進出も十分に可能なものを維持できている。テニスの奥深さを見せてくれる彼女の戦いぶりは、テニスファンなら必見だ。
日本勢で本戦入りがほぼ確実と言っていいのは、以上の4人だが、男子の添田豪(27歳)は、本戦入りするためのランキングはやや不足しているものの、開幕戦のチェンナイATP250で、スタニスラス・ワウリンカ(26歳、スイス)などを破ってベスト4に進出するなど絶好調。
また、女子の土居美咲(20歳)と瀬間詠里花(23歳)はストレートインできるか微妙なポジションにいて、上位勢の出否次第。予選圏内には他に男子に杉田祐一(23歳)がおり、女子には100位台の奈良くるみ(20歳)、瀬間友里加(25歳)、藤原里華(30歳)を始め、200位台につけている10名ほどにチャンスがある。伝統的に言えば、全豪と日本勢の相性はいい。一人でも多くの選手が予選を勝ち上がり、真のコンペティションであるGS本戦の舞台を経験してほしいところだ。
写真:上は錦織圭(楽天ジャパンオープン)、下はクルム伊達公子(HPオープン)、クリックで拡大