sada201202102s2.jpg男子の国別対抗戦であるデ杯ワールドグループ1回戦、日本対クロアチアの初日が、2月10日から兵庫県のブルボン・ビーンズドームで開催され、日本は添田豪がイワン・ドディッグに勝利したものの、エースの錦織圭がイボ・カルロビッチに敗れる形で1勝1敗として初日を終えた。
デ杯は3日間で両国のナンバー1対2のシングルス2試合、2日目にダブルス1試合、最終日に両国のナンバー1と2同士が対戦する形式で行なわれ、先に3勝を挙げたチームが勝ち上がる仕組み。今年の日本が参加しているワールドグループはその年の世界一を争うトップカテゴリーで、昨秋のプレーオフでインドに勝ってアジア・オセアニアゾーンを抜けた27年ぶりの頂点の舞台だ。


対戦初日の第1試合に登場したのは添田豪。この数年は「日本チームのジョーカー」として、単複の大事な試合に向けて温存される役回りが続いていたが、昨季からの好調ぶりを買われて今回は初日からの登場となった。
「信頼されているのは分かっていたが、やはり最初から出たかった」と添田は話していたが、彼は竹内映二監督の信頼に応える活躍を見せ、クロアチアの強打者ドディッグを相手に、序盤から真っ向勝負を挑み、先にリードを許しつつも試合の中で徐々に相手の自信を削りとって、最後は逆転での勝利を収めた。
「最初から自分のテニスは良かった。第3セットを取り返せればそのまま行けると思っていた」と添田は試合後には話していたのだが、竹内映二監督が明かしたところによれば、序盤の添田はいいテニスをしているのに劣勢を強いられていたためか、あるいは自分でも緊張感に飲まれていたのか、リードを許している状況にやや呆然としていたらしく、「第3セットを取り返せれば必ず流れが来る」と繰り返し伝えていたという。
試合の後半に向けて添田のショットの精度が増し、対戦相手のドディッグは「第3セット以降、特に第5セットは相手がレベルを上げてきて、自分はそれに付いていけなかった」と語る出来の良さを見せつけて逆転で勝利。日本にとってワールドグループ制以降では本戦トーナメントにおける初勝利という歴史的偉業がおまけに付く形になった。
続く第2試合に登場したのは、今や日本の大エースに成長した錦織圭。しかし、相手が208cmの調子を誇り、世界最速のビッグサービスを誇るイボ・カルロビッチの、しかも「当たっている日」だったのがつまづきの始まりだった。
錦織が相手には簡単にサービスゲームをキープを許していくのとは対称的に、カルロビッチは自分のサービスゲームはほぼ磐石のままて試合を進め、要所ではリスクを自ら取って勝負に出たポイントをことごとく成功させて試合を締めた。「これで終わりじゃない。次にまた頑張って、そして勝ちたい」と錦織は唇を噛んだ。
2日目以降の作戦について竹内監督は、「明日のダブルスで勝てば錦織に勝負を決する試合が回ってくる。添田と錦織のダブルスという選択肢もあるが、うちのチームは一人が3試合をこなす可能性より、単複を分業制にしてそれぞれに集中してもらった方がいいと考えている」と語り、2日目には予定通り杉田祐一と伊藤竜馬を送り出す意向を言葉にした。
杉田と伊藤は昨秋のインド戦でも、世界的なダブルスの強豪ペアを相手に、あと一歩までと迫った実績もあるだけに、今回も最後のポイントが決まるまでは一切の予断を許さない緊迫した戦いが繰り広げられるだろう。
3日間で4人の選手で5試合というフォーマットは、初日にダメでも翌日以降に持ち越せる真剣勝負。「デ杯では何が起きるかわからない」と言われる理由もそこにあるものだが、対応力の高さではすでに世界トップクラスと言ってもいいレベルにいる錦織が、転ばされてただで起き上がるはずもないだろう。
今回の日本代表は、近代テニスが生んだ日本テニス史上最強のメンバーと言ってもいい。彼等がどこまで戦えるのか、注目と興味は尽きない。テニスファンならずとも、スポーツ好きを自認する方なら、この対戦を見逃してはならない。掛け値なしで、本物の対戦競技の醍醐味を感じられる激戦となっているはずだ。
写真:テニスジャパン