
9月30日より本戦が開幕する「木下グループジャパンオープン2026」(東京・有明コロシアムおよび有明テニスの森公園/ATP500)。それに先立ち行われた男子シングルス予選1回戦に、日本テニス界のエース・西岡良仁(ミキハウス)が登場した。
左肩の怪我により約7カ月間もの長期離脱を余儀なくされていた西岡。実戦復帰となった今大会は、肩の状況を含め「自分が今どれだけ戦っていけるのか」を見極める復帰戦となった。
対戦相手は、かつて世界ランキング3位を誇るステファノス・チチパス(ギリシャ)。
第1セット、西岡はブランクを感じさせないプレーで先にブレークを奪い、かつてのトップ3相手に食らいつく健闘を見せる。しかし、徐々にギアを上げたチチパスのパワーと攻勢に押され、逆転でセットを落としてしまう。
続く第2セットでは、チチパスが果敢にフォアハンドで回り込み、浅い逆クロスで主導権を握る。西岡は攻め手を見出せないまま2-6で敗れ、ストレートで敗退となった。

試合後の会見で、チチパスとの対戦が決まった際の心境について問われた西岡は「チチパスと当たるということに関しては、すごくワクワクしていた反面、正直肩がすごく心配でした」と吐露。
「海外に出ていなかったので、練習相手が国内に限られてしまっていた。全米オープンやデビスカップ、アジア大会などで主要選手が不在の中、あれほどのパワーを持つ選手と練習する機会があまりなかったので、彼のフォアなどにどこまで耐えられるか若干不安がありました」と復帰戦ならではの難しさを明かした。
その上で、約7カ月ぶりの実戦を以下のように振り返った。
「今日勝ち切るのはかなり厳しかったと思いますし、以前できていた感覚の中でできなくなっていることもありました。ただ、悪くない部分はやっぱり存在していました。怪我でセカンドサーブが特に打てなくなっていますが、元々サーブが得意ではないので影響はないかなと。むしろストロークの精度などを高めていく必要があります。一番良かった時期のテニスはかなりできなくなってきているので、もう一回新しいテニスとして確立していく必要があると思っています」
さらに今後の戦い方のシフトチェンジについても言及した。
「ミスが少ない、コースを突けるといった強みは残しつつも、身体の負担が増えてできること、できないことが明確になってきている以上、捨てるところを捨てて取れるところを取りに行く戦い方にシフトしていかないといけない。昔のように3時間、4時間粘り続ければ勝てるわけではないので、できる限り短い試合時間でポイントも早く終わらせるようにしたい。そういうシフトができればもう一回チャンスはあるし、長いスパンで戦っていける。今日の試合でそれが理解できたことがプラスでした」と、敗戦の中にも確かな将来への収穫を口にした。

また会見では、今大会を最後に現役引退を表明している錦織圭(ユニクロ)についても深く言及。同じプロ選手として同じ舞台に立ったからこそ実感した、錦織の真の凄さについて熱く語った。
「圭くんがツアーからいなくなるという感覚は、正直まだ実感があまり湧いていません。ただ、どんな選手であってもいつかは終わりが来るという、アスリートとしての宿命を改めて再認識させられました」と西岡はあ切実な胸の内を明かした。
「客観的に見れば『錦織選手ってたくさん優勝しているよね』『グランドスラムで全部ベスト8以上に行っているよね』というのは結果だけでもすごさがわかります。ただ、いざ自分が同じような立場や空間に立って同じように結果を出そうとトライした時に、それがどれだけ現実離れしていることなのかを痛感するんです。『錦織選手が異常値だったんだ』と。同じ大会に出て近くで見ているからこそわかる難しさがありました。ビッグ4がいたあの時代の中で、そこに唯一入り込んで結果を残し続けたというのは、ファンの人たちとはまた違う目線で見ていたところです。間違いなく今後現れないであろう選手の一人だと言っても過言ではないと思います」
さらに「当時のビッグ4や独特な強みを持つ選手たちがいる中で、錦織選手も誰も持っていない強みを持っていました。タイミングの速さや相手を見る能力、相手との距離感の詰め方、そしてコートに入っていくスピード。あのテニスは誰にも真似できるものではないですし、誰もできないからこそあの結果や実績があるのだと思います」と惜しみないリスペクトを贈った。
先輩の決断を前に「自分もいずれ終わると考えると、どういう終わり方をしたいかを改めて考えさせられる瞬間になった」と語った西岡。「最後はどういう結果になるかわからないですが、(錦織の試合には)同じ選手としてその瞬間に立ち会いたいですし、最後の空気を一緒に味わいたい」と話し、偉大なパイオニアへの敬意を滲ませた。
敗戦と苦難を乗り越え、新たなスタイルへの進化を誓った西岡良仁。偉大な先輩の背中を見送りながら、レフティの挑戦はここ有明から再び始まっていく。
【9月28日月曜日の結果】


この日予選1回戦に挑戦した日本人、望月慎太郎(木下グループ)とダニエル太郎(エイブル)は予選1回戦敗退となった。
■シングルス予選1回戦■
○A・フィス (フランス) [1] 2-6 6-1 6-1 ●M・ダム (アメリカ)
○K・マイクシャク (POL)[6] 7-5 6-2 ●L・ソネゴ(イタリア)
○S・チチパス (ギリシャ)[2] 7-5 6-2 ●西岡良仁(ミキハウス) [WC]
○R・ヒジカタ (オーストラリア) 6-2 6-3 ●C.U・カラベッリ (アルゼンチン)[7]
○A.D・パジェホ (パラグアイ) [3] 6-3 6-2 ●ダニエル太郎 (エイブル)[WC]
○J・ファリア (ポルトガル) [5] 6-2 6-4 ●望月慎太郎(木下グループ) [WC]
○J・ムナール (スペイン) [4] 5-7 6-1 6-4 ●M・ギロン (アメリカ)
○A・コバセビッチ (アメリカ)[8] 6-7(7) 6-2 6-4●Z・スバイダ (アメリカ)
取材:保坂明美 写真:鯉沼宣之

