スローン・スティーブンス(テニス)オーストラリア・メルボルンで開催中の全豪オープンは23日に男女準々決勝を行い、19歳の新鋭スローン・スティーブンスが、第3シードで優勝候補のセリーナ・ウィリアムズを、3-6、7-5、6-4で破る波乱が起きた。もう一つの準決勝では、第1シードのビクトリア・アザレンカスベトラーナ・クズネツォワを、7-5、6-1で破り、2年連続のベスト4進出。アザレンカとスティーブンスは明日24日に、決勝進出をかけて対戦する。

予想外の出来事に、スタジアムを埋めた1万5千人の観客からは、興奮の大歓声と戸惑いのどよめきが沸き起こった。ここまでセットを落とすことなく勝ち上がってきた女王セリーナが、スティーブンス相手に第2セットを落としたときのことである。しかも第2セットの第8ゲームで、ドロップショットを追った際にセリーナは背中を痛め、うめき声を上げた。今大会最速207kmを計測したセリーナのサーブが、この負傷以降は130km代にまで落ちている。波乱の予感が、日が傾きはじめたメルボルンを支配した。

だがその悪夢のシナリオを否定するかのように、セリーナは第3セットで先にブレーク。第7ゲームで2度のデュースの末に、最後はフォアの打ち合いを制した女王のプライドが、若きチャレンジャーを退けるかに思われた。

だが、「私のアイドル」と慕うセリーナ相手に物怖じしないスティーブンスは、直後のゲームでブレークバックに成功。優れたアスリートである19歳は、コートを縦横に駆け、深いストロークでセリーナの体勢を崩すと、すかさずネットに詰めてボレーを決める。試合終盤に向けミスが増えるセリーナと対照的に、最後まで高い集中力を持続したスティーブンスが、センターコートで女王撃破の偉業を成し遂げた。

セリーナが去った後のコートで、勝者としてのインタビューを受けるスティーブンス。自分の部屋にセリーナのポスターを飾っていたというアメリカのホープは、「憧れの選手を破り、準決勝に進んだ気分は?」と聞かれると、言葉を詰まらせ涙を流した。

そのスティーブンスが準決勝で挑むのは、昨年の優勝者にして世界1位のアザレンカ。準々決勝でのアザレンカは、元世界2位のクズネツォワに試合立ち上がりから苦しめられた。だが、1時間17分を要した第1セットを競り勝つと、以降は強打を広角に打ち分け試合を支配。クズネツォワのバリエーション豊かな攻撃を、自らも積極的にネットに出るプレーで封じ込めた。

セリーナが姿を消したことにより、連覇への道が大きく開けたアザレンカは、スティーブンスについて「彼女はとても才能豊かな、オールラウンダー。ここ数年で急激に成長してきた」と、その潜在能力を高く評した。

※写真は全豪オープンの準々決勝で第3シードのセリーナ・ウィリアムズに勝利したスローン・スティーブンス
Photo by Hiroshi sato