テニスでは、相手のボールのコース、軌道、バウンドが常に異なり、同じ状況が二度とないため、「自由な発想が大切」と言われがちです。間違いではないのですが、それだけでは不十分です。
テニスを始めたばかりの段階では、正しい体の使い方や動きを反復練習で身につけることが非常に重要です。ただ、ボールをつなげられるようになることや良いショットを打てるようになるだけでは、試合での十分な戦力にはなりません。
トップ選手になればなるほど、ダブルスはもちろん、シングルスでも「型(セオリー)」がある程度決まっています。選手それぞれがその「型」を基盤にしながら、自身の特徴を活かしているのです。
多くの人はプロの試合での打ち方やボールの強さ、スピードに目を奪われがちですが、実際のポイントの取り方は非常にシンプルです。ここでいう「型」とは、ポイントの取り方における基本の流れを指しています。
具体的に「型」を説明すると、たとえば相手にダウン・ザ・ラインで打たれたとき、自分はどこに返球するのか。そのボールが良いショットだった場合とそうでない場合で、さらに細かく分けて判断しなければなりません。そして、頭で考えずにこれを実行する力が求められます。また、ドロップショットを打つ際も感覚だけではなく、「相手の重心の逆を突く」といった運動力学に基づく判断が必要です。
以前、プレイヤーズクラスを指導していた際に、APF Academiesに所属する選手たちの試合での戦い方が好きで、どのように指導しているのか知りたいとチームに加わったタイ人の選手がいました。その後、その選手はタイの12歳、14歳以下のカテゴリーでチャンピオンになりました。
「あの人、良いテニスをしているよね。」
この言葉こそがとても大切だと私は考えています。そのためにも、「型」を学ぶことが重要です。
「もっと自由な発想をもってプレーして」
とても響きのいい言葉ではありますが、「型」のないところに自由な発想は生まれません。