世界ランキング4位の錦織圭、昨年準優勝の活躍を果たした全米オープンが今月31日から開幕。どのようなトレーニングをしたら錦織圭選手のようになれるのか? プロ、トップジュニア指導、ジュニア女子ナショナルチーム合宿サポートに携わってきたPassion Sports Training代表の武井敦彦はジュニア時代からの計画されたトレーニングの重要性を説く。

今週、全国中学生テニス選手権が福島県で開催されている。ある中学1年生のジュニアは、テレビの錦織選手特集で、足を前後に広げ、ダンベルを持ちながら重心を落とすことにより、臀部や大腿部分の強化をするトレーニングを見て、真剣にそのトレーニングを取り組みたいと相談に来ました。しかし、まだ身体が成長段階にあるのに、果たして重い負荷を掛けた「筋トレ」は必要なのでしょうか?

中学生は「筋トレ」を始めるのに適した年齢ですが、それはまだ自分の体重を中心に行うものですが、もし1時間トレーニングに費やせる時間が作れるのならば、「年齢に適した必要なトレーニング」を行うことが重要であると言えます。計画的にトレーニングを行うことが錦織選手のように成る為の近道だとも言えると思います。

平野太陽

そこで、今回は、各年齢に適したトレーニングを紹介し、プロテニス選手として活躍出来る為のトレーニング指針を説明させて頂ければと思います。テニス選手として活躍する為には、運動能力を出来るだけ向上させる事が重要です。

9つの運動能力要素が必要と言われており、テニスに照らし合わせて説明すると

パワー
短期間で力を作り出せる能力の事です。テニスでいうと、力強いフォアハンドやサーブを打つときにこのパワーが必要になります。

ストレングス
強さや強靭、最大限の力を作り出せる能力。向上する事により、パワーも向上する。トレーニング例として体幹トレーニングなどがあります。

スピード
横方向の動き、前後方向の動きなど、いかにボールに素早く入り、良い位置でボールを打つかは非常に重要な分かれ目になると思います。

アジリティ
アジリティとは機敏に方向転換出来る能力。スピードが速いだけではなく、加速と減速を機敏に繰り返す事の出来る能力。

クイックネス
与えられた刺激に対して、どれだけ早く反応し動けるか。相手の返球を確認後、すぐに一歩目を出し、ボールに追いつくことが出来るかが鍵。

コーディネーション
どれだけ関節を筋肉の動きに対してコントロール出来るか、体全体を効率よく動かせる能力。ボールを目で見て判断し、それに基づいて身体を動かす。

柔軟性
身体の柔らかさ、関節可動域を維持する事がパフォーマンス発揮だけではなく、障害予防にも繋がる。テニスに必要な柔軟箇所は、足関節、股関節、体幹、そして胸郭と言われている。

筋持久力
同じ動作を継続的に使い続ける事が出来る筋肉のスタミナ。テニスは2-3時間はプレーし続けなければなりませんので、ラケットを振る為に必要な上肢の筋持久力は勿論、フットワークなどで使い続けられる下肢のタフさも必要になる。

心肺機能
長い試合を続けられるスタミナ、この能力が高いと、疲労回復能力も早い事が分かっています。基礎的な体力構築は必要不可欠であると言えます。

9つの運動能力要素表について
次にどの年齢にどの要素のトレーニングを主に行うことが能力開発の面で重要かという事について説明します。

武井敦彦

縦軸が9つの運動能力要素、横軸が年齢別になっています。

中学1年生では、錦織選手が行っていたようなダンベルを持ったトレーニングがあまり必要ではなく、必要なのはコートを素早く走る為のスピード、アジリティ、クイックネス、そして心肺機能と筋肉のスタミナ構築が最優先になってきます。

また、小学生では、筋トレを行う時間が作れるならば、代わりに上記のスピード、アジリティ、クイックネス、そして最優先課題のコーディネーション能力開発が非常に重要になってきます。

記事:長嶋秀和
著者:武井敦彦、Passion Sports Training代表、N’s Methodスポーツメディカル&トレーニングコーチ