
高校3年生での『ユニクロ全日本ジュニアテニス選手権』で「フェアプレー賞」を獲得し、ファーストリテイリング財団が贈呈する副賞のIMGアカデミー遠征で錦織圭選手からの指導を体験した高妻蘭丸選手。激闘の中で培った「諦めない心」と仲間や家族への感謝。大学までテニスをやり切り、学びを糧に社会人という新たなコートへ挑む彼の、ひたむきな成長と決断をインタビュー形式でお届けします。
Q 全日本ジュニアは高妻選手にとってどのような大会でしたか?
高妻 県予選や地区予選を勝ち抜いた全国から選ばれたジュニアたちが集まる、個人戦の日本最高峰の試合です。そこで結果を残すことがみんなの目標で、非常に緊張感のある大会でした。
Q 試合の中で最も大変だったことは何ですか?
高妻 高3の最後の大会のとき、約4時間の試合をしました。ファイナルセット7−5という非常にタイトなスコアで、足がつりかけ、軽い熱中症の状態でした。でも、ジュニアラストの大会だったので、最後まで諦めず、その時の力を振り絞って勝つことができました。
Q 全日本ジュニアで最も学んだことは何ですか?
高妻 この大会に出場できたこと自体が嬉しかったです。さらに、全国から集まった人たちと関わることで、様々なテニス観や取り組みについて聞くことができました。こうしたテニスを通じた繋がりは、今でも私の財産になっています。
Q メンタル面ではどのような成長がありましたか?
高妻 嬉しい経験と苦い経験の両方を経験しました。アンダー14の時は、準決勝で何度もマッチポイントを持ちながら9-11で負けてしまいました。こうしたテニスの楽しさだけでなく、その残酷さや難しさを学ぶことができました。
Q 楽しかった思い出はありますか?
高妻 地元が宮崎で、関西や関東に出ることがなかったので、靱公園や有明などの大きなステージでプレーできることが、とてもワクワクして嬉しかったです。また、各地域から勝ち上がってきた選手たちと仲良くなり、試合を通じて交流することができました。大阪では、たこ焼き屋、お好み焼き屋などにもよく行きました。
Q IMGアカデミー遠征での経験について教えてください
高妻 まずフェアプレー賞ということでこの機会が得られて嬉しかったです。IMGでは、12歳から18歳までのあらゆるカテゴリーの選手たちと共同生活をしました。部屋をシェアしたのは外国人だったので、日本語が通じない環境でしたがなんとかコミュニケーションをとりました。テニスに没頭することができるとても良い環境と楽しい経験でした。
Q 錦織選手からどのようなアドバイスを受けましたか?
高妻 テクニック面では、フォアを打つ時に重心が浮きやすかったので、アゴを地面に押さえながら打つ感覚を意識するようにとアドバイスを受けました。また、バックハンドが上手だと褒めてくださり、自信に繋がりました。
メンタル面では、試合中にリターンエースや主導権を取るために何を考えているかという質問に対して、「リターン(ゲーム)を落としても次のサーブで取ればいい」という気楽な考え方をしているとおっしゃいました。これは、目の前のゲームに集中しすぎてプレーが小さくなるのではなく、自分の得意なプレーに集中することの大切さを教えてくれました。
Q 丁寧に教えてくださったのですね。
高妻 2日間、30分単位で指導していただき、とてもズバズバとしたアドバイスをくださいました。夜のご飯も一緒に行き、ラフな雰囲気で話をすることができました。
印象としては、気さくなお兄さんのような方でした。当時着ていたユニクロの試合着に「らんたろうへ」と入れてサインを書いてくださり、それは今でも実家に大切に保管している宝物です。

Q これからの進路について教えてください
高妻 春からはサラリーマンとして働いていく予定です。5歳からテニスを始め、宮崎から高校では大分、大学では茨城と、やらせてもらえたテニスに対して、就職活動の前に、どこで踏ん切りをつけるかについて悩みました。
ただ、テニスに対してやり切ったという気持ちがあったので、選手としては区切りをつけることができました。テニスは30代、40代まで続けることもできますが、テニスが終わった後の人生の方が長いです。そのため、ここでテニスに区切りをつけた方が、今後の人生のためになると考えたからです。
Q なぜプロの道を選ばなかったのですか?
高妻 テニスから得たもの、学んだもの、経験させてもらえたことが多くあります。それらをテニスというフィールドだけで活かすのではなく、社会人になって、異なる環境で活かしたいと考えたからです。
Q これまで親やコーチからたくさんのサポートをいただいたと思います。最も印象に残っていることは何ですか?
高妻 試合後に親が何も言わずにそっとしておいてくれたことです。両親ともテニス経験者でしたが、負けた後などそっとしておいてくれたり、時間が経ってから「大丈夫か」と声をかけてくれたことが支えになりました。
試合がSNSやYouTubeで見られるようになりましたが、高校や大学になった今でも、親は「よくやった」「お疲れさま」と言ってくれるだけで、あまり干渉してこないところが良かったです。
Q 高妻選手の特徴として決して諦めないテニスが一つの武器だと思うのですが、それはどこから生まれたのですか?
高妻 小、中学生くらいまではバンバン打つテニスをしていました。しかし、高校に入ってエースとして団体戦に出場した時に、1点は自分だけのものではなく、チームのために勝たなければならないと実感しました。チームのために諦めずに戦い抜くことを、高校時代3年間で学びました。
大事な場面で雑に攻めてミスしてはいけません。自分がチームの代表として出ている以上、責任があります。1球でも多く返すことに高校時代フォーカスできたことが、テニスで結果を残せた理由だと考えています。
Q 全日本ジュニアが始まってますが、出場する選手へのアドバイスをお願いします。
高妻 まず、地域予選を勝ち抜いたこと自体が素晴らしいので、自分を褒めてください。目指すところは日本一なのか、1回戦突破なのか、人それぞれ異なります。16年、17年のテニス人生で思うのは、調子が良い時や勝っている時は、テニスを楽しんでいる時だったということです。有明という舞台でテニスをできるだけで楽しむ、そして最後の1球まで諦めない気持ちを持つことで、いい大会になると思います。

取材・構成/Tennis.jp

