伊藤竜馬(テニス)1月14日に開幕した全豪オープン初日、日本の伊藤竜馬は地元オーストラリアのジョン・ミルマンと対戦し、6-4、6-4、3-6、0-6、7-5の死闘を制した。

相手のショットが力なくラインを割った瞬間、伊藤は精魂尽き果てたかのように、ベースライン上に大の字になり倒れこんだ。見上げる上空は、既に漆黒の闇に包まれている。試合が始まったのは、まだ日も高い午後6時過ぎ。それから、3時間29分が経過していた。

ミルマンは2週間前のブリスベンで敗れていた相手だが、昨年は3戦して3連勝。手の内は知った相手であり、ランキングや実績では伊藤が上だ。第1と第2セットでは、伊藤がその差を存分に見せつけた。得意の強打で無理に攻めるのではなく、ベースラインからしっかり展開し相手のミスを誘う。サービスも時速200km以上をコンスタントに叩きだし、特に第1セットは相手に一つのブレークポイントも与えなかった。
 
雲行きが怪しくなりだしたのは、第3セットの序盤、太腿を気にしだした頃からだ。急激に動きが落ちた伊藤は左右の揺さぶりについて行けず、相手のショットを目で追うだけの場面が増えていく。実はこの時の伊藤は、「左の太腿から始まって両足に移り、最後はふくらはぎにも来た」というケイレンのため、「歩くのがやっと」という状況。第3セット3オールから3ゲーム連続で落とすと、「第4セットは捨てて、ファイナルセットに掛けようと思った」。突然のアクシデントにもパニックに陥ることなく、苦境の中での最善の策を講じた。

その思い切りの良さが、勝利の女神を振り向かせた要因だろう。「ファイナルに入ったら奇跡的に(足が)回復した」伊藤は、再び足を動かしながら丁寧に攻め、相手のミスを誘っていく。それでも、先にリードしながら追いつかれる苦しい展開となるが、「最後は我武者羅」に戦い、執念で勝利をもぎ取った。

これで伊藤は、全豪では2年連続の初戦突破。今年は更なる上を目指し、竜馬がゆく。

※写真はフルセットを気力で戦い勝利した、伊藤竜馬
Photo by Hiroshi Sato