
令和8年度全国高等学校総合体育大会(インターハイ2026)テニス競技は、奈良県のワタキューテニスパーク明日香を会場に、2026年8月2日(日)から8月8日(土)まで開催され、8日男子シングルス決勝が行われた。四日市工の小野倫太郎が、6-3 2-6 [10-7]で関西の稗田光から勝利を収め、悲願のインターハイ個人戦頂点に輝いた。
小野にとって、この1年は特別な思いで駆け抜けた時間だった。昨年、同じ四日市工の仲間でもあり、ライバルでもある義基耀(よしもとあかる)がインターハイで優勝を果たす瞬間を目の当たりにした小野。「おめでとう」と祝福する心の一方で、込み上げたのは「羨ましい」という憧れと「自分も優勝したい」という悔しさだった。
「近くにチャンピオンがいたからこそ、義基に勝てるように日々練習を重ねて自信をつけていけた」
身近なヒーローの背中を追い、その存在を胸に日々の厳しい鍛錬を己に課してきた小野。昨年の1回戦敗退という悔しさから「苦しい場面を乗り越えるメンタル」を毎試合意識して鍛え上げ、精神面で大きな成長を遂げてこの夏のコートに立っていた。

小野は団体戦ベスト16敗退という悔しさを胸に、「自分の持っているものを出し切る」と一戦一戦を全力で戦い抜き、苦しい接戦を乗り越えて決勝へと進出した。対する稗田も、仲間や親への感謝を背負い、高い技術と粘り強さで数々の激闘を制してファイナルの舞台へと上り詰めた。
高校最後となる夏の頂点をかけ、激しい熱戦の火蓋が切って落とされた。真夏の強い日差しが照りつけるコート上で展開された決勝戦は、両者の意地とプライドがぶつかり合う息詰まる展開となった。
第1セットは、小野が立ち上がりから自分のプレーをしっかりと発揮し、6-3で先取する。しかし、第2セットに入ると稗田が冷静に立て直し、相手のミスを誘うメリハリのあるラリーで挽回を見せた。「少し自分も落ち着いて、ファーストセットよりしっかりラリーができた」と稗田が語る通り、ドロップショットなどをうまく使って組み立て第2セットを取り返し、勝負の行方はファイナルセットの10ポイントマッチタイブレークへともつれ込んだ。

小野は思うようにいかない展開となったところ「トイレットブレークに行った時に自分を奮い立たせ、後悔が残らないように全て出し切ろうという強い気持ちで臨んだ」と振り返る。運命の最終セット、疲労がピークに達する極限状態の中で明暗を分けたのは、覚悟の差だった。
稗田が「小野くんが粘り強くて、いつも決まっているところが取れなかった。相手はやることが決まっていた」と悔やんだように、小野は迷うことなく自らのメンタルを極限まで高めた。
「自分の持ち味である精神的な強さを最大限生かして、誰よりも声を出してやる気に満ち溢れた闘志を示せた」 熱い声をコートに響かせ、1ポイントずつ泥臭く食らいつき続けた小野が最後の一球を制し、ついに夢にまで見た全国の頂点へと駆け上がった。
「かつては夢物語だと思っていた」と語るタイトルを、義基の背中を追った日々の愚直な鍛錬と折れない心で現実のものとした小野。「インターハイ優勝という歴史に名を刻んだからこそ、それに恥じない生き方をしていきたい」と語るその言葉には、成長を遂げた王者の風格が漂っていた。
そして、敗れはしたものの「学校の仲間や親の応援があったからこそ戦えた。自分のテニスはこれから」と前を向いた稗田の清々しい姿もまた、準優勝という形で名前を刻んだ。
高校最高峰の熱戦を最後まで戦い抜いた2人にとって、このコートで見せた汗と葛藤、そして互いを高め合った時間は、これからの選手生活を鮮やかに彩る輝かしいマイルストーンとなったに違いない。ここで得た糧を胸に、彼らはまた新たな未来へと歩みを進めていく。

優勝:小野倫太郎(四日市工)

準優勝:稗田光(関西)

3位:太田周(大分舞鶴)

3位:中本莉空(精華学園宮島)
取材・写真:保坂明美


