パリのローランギャロスで開催中の全仏オープン5日目。261位のポールアンリ・マチュが、第10シードのジョン・イスナーを6-7(2)、6-4、6-4、3-6、18-16で破る番狂わせを演じると同時に、全仏史上2番目の長時間試合を記録した。なお、この試合後に予定されていた森田あゆみマリア・シャラポワ戦は、日没のため翌日に繰り越された。


イスナーのフォアのクロスがサイドラインをわずかに割ったとき、試合開始時にセンターコートの半分を隠していた影は、スタジアム全体をすっぽり覆っていた。試合時間は、5時間41分。ファイナルセットだけで、2時間28分を要するマラソンマッチである。
206センチの長身を誇るイスナーは、2階から打ち下ろすような角度のあるサーブが最大の武器。対するマチューは、ボールを前後左右に丹念に打ち分け、速い展開を好むイスナーのリズムを崩しに掛かった。イスナーは2年前のウィンブルドンでも11時間5分の最長試合を戦っており、長い試合には慣れているかと思われたが、長い足を赤土に絡み取られ、試合終盤に向け疲労の色を濃くしていく。普段なら時速200キロをゆうゆうと超えるサーブが、最後は180キロ前後しか出ていなかった。
地元の大声援がタンクにエネルギーを注いだか、5時間以上戦ってなお、体力を多く残していたのは30歳のマチューのほうだった。膝の手術のため、昨シーズンのすべてを休養とリハビリにあてた30歳は、「正直、こんなに戦えるなんて自分でも驚きだよ」と試合後に目を丸くする。6つあったマッチポイントは逃したが、7度めの正直で、文字通りの死闘にピリオドを打った。