東レPPOテニスが、23日に有明テニスの森で開幕。日本人選手の先陣を切って登場した森田あゆみが、世界ランキング30位のソラナ・チルステアを6-2、3-6、6-2で破り2回戦に進出した。
最後は会心のフォアのクロスが、相手コートを引き裂いた。チルステアの強打に一歩も引かず、むしろ前に踏み出しウィナーを奪う。この日の森田の心意気が、凝縮された一打だった。
この大会に挑むにあたり、森田は「ベースラインから下がらず、リスクを負っても攻撃的に行く」というテーマを掲げていた。そのようなテニスへの転機を与えてくれたのは、奇しくもこの日の対戦相手であり、親友でもあるチルステア。
「よく彼女とは練習するが、いつも相手に攻められていた。自分から攻めるには、ベースラインから下がってはだめだと感じた」
その成果はこの日、第1セットからスコアに反映された。早いタイミングで深く返ってくるストロークに、相手がミスを重ねていく。「テークバックを変えた」というサーブが安定していたことも、試合の主導権を握れた大きな要因だ。第1セットはわずか31分で森田が奪い去った。
第2セットに入ると、そのサーブに乱れが出始める。ファーストサービスの確率が50%代にまで落ち、重要な局面でダブルフォルトも出てしまった。第2セットを奪われ、試合は最終セットへ突入する。
ここで森田は、再び気持ちのネジを巻き直した。「最近はフルセットで勝てていない」との不安も頭をよぎったが、「メンタルの弱さを見せたら絶対に勝てない。前向きに行こう」と自らを鼓舞し、前に前にと踏み込んでいく。第2ゲームで奪った2本のフォアのウィナーは、そのようなメンタルの強さと、積み上げてきた確かな技術の表れだ。ゲームカウント3-1で迎えた第5ゲーム、3度のブレークポイントをしのいだ時点で、森田の勝利は事実上決まった。
今シーズンは、テニスの調子は悪くないながらも、腰痛に悩まされ勝てない時期を長く過ごした。そこで思い切って休みをとり、原因究明と治療につとめたことで、結果も徐々に出始めている。つらい経験をしたことで、周囲の意見に耳を傾けたり、自分のテニスを客観的に見つめることが出来たのは、けがの功名と言えるかもしれない。コンパクトに変えたテークバックや前に出る積極性は、そのような今季の結晶だ。
2回戦の相手は、世界6位のアンジェリーク・ケルバー。「全米のときに練習したが、彼女も下がらず打ってくる。自分も多少リスクを負ってでも、前に出て攻撃的に行きたい」。新たな森田のテニスがどこまで通用するか? 楽しみな一戦になる。
※写真は、東レPPOテニスの1回戦で勝利を収めた森田あゆみ
東レPPOテニス
シングルス
1回戦
○森田あゆみ 6-2 3-6 6-2 ●ソラナ・チルステア
○ ロベルタ・ビンチ[14] 6-4 4-6 7-5 ●バルボラ・ザフラボバストリコバ
○ドミニカ・チブルコバ[12] 6-3 7-6(3) アナベル・メディナガリゲス
○エレナ・ヤンコビッチ 6-3 6-3 ヤニナ・ウィックマイヤー
○ペトラ・マルチィッチ 0-6 6-4 6-3 ●アンドレア・ペトコビッチ
[ ]内の数字はシード順位