有明コロシアムおよび有明テニスの森公園コートで開催中の東レPPOテニスは、29日に決勝が行われ、第17シードのナディア・ペトロワが第3シードのアグニエシュカ・ラドワンスカを6-0、1-6、6-3で破り、自身初の同大会優勝を果たした。
第1セットは6-0で、第2セットは1-6……スコアだけを見ると、どちらかに一方的に流れが行った、荒っぽい試合のように感じられる。だが実際にはそうでないと、両選手ともに口を揃えた。「長いラリーも多かったし、少しの差が重なってこういう差になった」とラドワンスカが言えば、「スコアは試合内容を反映していない。内容はとても競っていた」とペトロワも振り返る。
「いつもと同じようにプレーしていたつもりだが、緊張で少し固くなってミスが増えたのかもれない」
ラドワンスカは、積み重なった「少しの差」の内訳をそう明かした。それが決勝の緊張感であり、タイトルの重みである。
その重圧の中、冷静さを保ち最後まで作戦を遂行したのは、これまで精神面の脆さが指摘されることの多かった、ペトロワである。「第2セットでは、エネルギー切れのような状態だった。第3セットに入る前に服を着替え、コーチに“コートサイドからも、エネルギーを送ってくれ”と頼んだ」というほどの消耗戦。
それでも「相手は、私の高く弾むサーブに手こずっていた。その弾むサーブをバックに集めた」と、分析力と集中力は失っていない。第3セットでは自分のサーブをキープしつつ、少ないチャンスをじっと待つ。そしてゲームカウント3-4の場面。相手がおかした2連続ダブルフォルトをを機と見るや、バックの強打ですかさずブレークをもぎ取った。このポイントが、第3セットでは両者を通じて唯一のブレークポイントであった。
勝利の瞬間、コーチの方を向き両膝を地面につけると、力尽きたように前に倒れた。この勝利の持つ大きさを、見るものにも感じさせる場面である。30歳にして手にした、彼女のキャリアでも最大級のタイトル。6年前には世界の3位まで達しながらも、その後は低迷する時期も過ごした。だが、ハンマー投げ選手とスプリンターの両親を持つ才能の宝庫は、今季から新たなコーチをつけ、再び上位への意欲を見せている。
「モチベーションさえあれば、年齢なんて単なる数字に過ぎない。私は今でも毎朝目が覚めると、練習コートに行き上達したいと感じている。キャリアの終盤かもしれないが、グランドスラムを取るのが私の夢」
その夢への大きな足がかりは、東京で手にした。
※写真は、東レPPOテニスでラドワンスカを破り、優勝したナディア・ペトロワ
photo by Hiroshi Sato
東レPPOテニス
シングルス
決勝
○ナディア・ペトロワ 6-0 1-6 6-3 ●アグニエシュカ・ラドワンスカ