有明コロシアスおよび有明テニスの森で開催中の楽天ジャパン・オープンは、3日にシングルス1回戦および2回戦、そしてダブルス1回戦が行われた。優勝した全米以来の大会出場となるアンディ・マリーは、ルーカス・ラコを1時間たらずで破る、完璧な勝利で順当に3回戦へ。フアン・モナコと組んでダブルスに出場した錦織圭は、第3シードのゴンザレス/リプスキーを破り2回戦へ進出した。
敵に回せばやっかいな相手だが、味方になれば頼もしい相棒――モナコは錦織にとり、さしずめそんな存在だろうか。先週のマレーシア・オープンでは、準決勝でマッチポイントを掴みながら逆転負けを喫したモナコと、今週はダブルスを組んで出場。その初戦で見事、第3シードの強敵を撃破する殊勲の星をあげた。
2人がダブルスを組むのは今年3月以来だが、そのころから錦織は「ダブルスのパートナーとして、凄く相性が良い」とモナコを評していた。陽気なモナコの人間性にも「ツアーでは『良い人すぎる』と言われるほど良い人。明るいノリで盛り上げてくれる」と信頼をおいている。両者ともにストロークやリターンが強く、ネットプレーも苦にはしない。強い信頼感があるからこそ、時に大胆なプレーも飛び出す。そのような両者のコンビネーションは、試合が進むにつれさらに精度を高めていった。
雨天のため屋根が閉じた有明コロシアムでは、風や太陽の影響も受けないため、両チームともサーブが安定する。第1セットはテンポの良いキープ合戦となり、タイブレークになだれ込んだ。
ここで大胆さを見せ勝負をしかけたのが、錦織である。最初のポイントで相手のサーブを強烈に叩くと、そのまま前に出てフォアのショットを鋭角に決める。このミニブレークが、タイブレークの流れを決めた。次のポイントでは、相手の浮いたサーブリターンを錦織が豪快にスマッシュで叩きこむ。その後も勢いに乗る錦織/モナコ組がポイントを重ねて、タイブレークを7-1で奪った。
セットが変わっても一度掴んだ流れを失わないのが、トッププレーヤーの強さ、あるいはモナコが持つラテンのノリだろうか。2-1で迎えた相手のサービスゲームでは、モナコがバックのリターンをダウン・ザ・ラインに決めてブレーク。そうして奪ったこのリードを、2人はしっかり守りきった。マッチポイントを決めたのは、モナコの豪快なスマッシュ。そしてその一撃を生み出したのは、クロスを切る相手前衛の動きを見切った錦織の、心憎いダウン・ザ・ラインへの柔らかいショットである。
フォアサイドに錦織が入るフォーメーションは「ウォームアップ前のベンチで決めた」という程のざっくばらんさ。だがそれでも良い試合ができたのは、そのようなノリが2人に合っているからなのかもしれない。個々の技術で上回る2人のトップアスリートが、信頼の連携で手にした会心の勝利だった。
※写真は、楽天ジャパン・オープンのダブルス1回戦で、フアン・モナコと組んで勝利した錦織圭
Photo by Hiroshi sato
楽天ジャパン・オープン
シングルス
2回戦
○アンディ・マリー(英国)[1] 6-1 6-2 ●ルーカス・ラコ(スロバキア)
○スタニスラス・ワウリンカ(スイス) 7-6(1) 6-7(6) 7-5 ●ジェレミー・シャルディー(フランス)
1回戦
○ヤンコ・ティプサレビッチ(セルビア) 4-6 6-3 6-1 ●ジル・シモン(フランス)
○フアン・モナコ(アルゼンチン) 6-2 6-1 ●グリゴール・ディミトロフ(ブルガリア)
ダブルス1回戦
○錦織/モナコ 7-6(1) 6-3 ●ゴンザレス/リプスキー
○シャルディー/メロ 6-3 6-4 ○守屋/鈴木