クルム伊達公子(テニス)
米国カリフォルニア州で開催中のBNPパリバオープンは現地時間7日に男女1回戦を行い、ワイルドカードで本戦に出場したクルム伊達公子が、ガリナ・ウォスコボエワを、6-4、3-6、6-4で破り2回戦に進出した。

長く苦しい試合を、持ち前の勝負強さでクルム伊達がもぎ取った。対戦相手のボスコボエワは、コンスタントに170キロ以上のサービスを叩きこんでくる長身選手。ストロークも強烈でフラットの強打を左右に打ち分ける。かと思えば突如としてネット際にドロップショットを次々と落としてくる。

トリッキーな相手を向こうに回し、クルム伊達はリズムを掴むのに苦労した。第1セットはそれでも、6本のブレークポイントを全て凌ぎ、自らは勝負どころの第9ゲームで2つ目のブレークポイントをものにしセット奪取。

だが続く第2セットは、第6ゲームを5度のデュースの末にブレークしたボスコボエワが奪い返し、試合はファイナルセットに突入した。

第3セットは、勢いに乗るボスコボエワが最初のゲームをいきなりブレーク。続くゲームでは、クルム伊達が2本のブレークポイントを握るが、その度にボスコボエワの強烈なサービスにチャンスの芽を摘まれる。立ち上がりで、0-2とリードを許し、クルム伊達は窮地に追いやられた。

クルム伊達の真骨頂が発揮されたのは、ここからだ。互いにロブやドロップショットを打ち合う長いラリーが展開されるが、多くの場面で走り合いを制するのはクルム伊達。相手のサービスにタイミングが合いはじめ、ドロップショットも拾ってウイナーにする場面が増えてくる。第4ゲームをブレークバックすると、鋭いリターンを軸に第8ゲームもブレークし、5-3で自らのサービスゲームを迎えた。

しかし後がなくなり開き直ったか、ボスコボエワはこの場面で左右から強打を次々と叩きこむ。ブレークバックを許し5-4。試合の流れが変わりそうな気配が漂った。

そのような重要な局面で、クルム伊達は驚異的な集中力を発揮した。深いリターンをボスコボエワの足元に返し、相手のミスを引き出していく。最後はボスコボエワのバックがラインを超え、2時間17分の熱戦に終止符。その瞬間、クルム伊達の「カモン!」の声がカリフォルニアの空に響いた。

「相手はサービスが良く、ブレークポイントを握っても直ぐに取り返されてしまう。そのような中で我慢してチャンスを待ち、勝利できたのは大きい」

約1カ月ぶりの勝利を、クルム伊達は確かな手応えと共に噛み締めた。

※写真は、BNPパリバオープンの女子シングルス1回戦でガリナ・ウォスコボエワにフルセットで勝利したクルム伊達公子
Photo by Hiroshi sato