クルム伊達公子(テニス)
パリ・ローランギャロスで開催中の全仏オープンは、28日に男女1回戦を実施。日本のクルム伊達公子は2010年準優勝者のサマンサ・ストーサーと対戦し、6-0、6-2で敗退した。

試合後のクルム伊達の表情は、意外なまでにサバサバしていた。悔しさがない訳では、ないだろう。だが、ときおり笑みさえ浮かべ敗戦を振り返るその理由は、クルム伊達にとり今季のクレーシーズンの位置づけが明確だからだ。

「怪我なく終えることが出来たので、目標は達成です」

その言葉は決して負け惜しみでも、悔しさを取り繕うためのベールでもない。昨年、慣れない赤土で無理に試合を重ね怪我を悪化させた反省を生かし、今年は可能な限り出場試合数も抑えてきた。そこに来て、ほぼ、ぶっつけ本番で出場した全仏オープンの初戦で、クレー巧者のストーサーとの対戦である。「勝つチャンスがあるとは、なかなか思えなかった」というのも、偽らざる本音だろう。

加えるなら、この日のストーサーは完璧とも言える内容だった。全ての女子選手が恐れるキックサーブは赤土を容赦なく抉り、コートの外へとクルム伊達を追い出していく。強烈なスピンを掛けたフォアの重い打球はコーナーを捉え続け、バックのスライスも「とても効果的だった」と本人が自画自賛する出来栄え。高く弾むフォアと、直線的にコートを切り裂くバックの強打、そしてネットをかすめコートを滑るように飛ぶスライス……それらのコンビネーションの前に、第1セットのクルム伊達はチャンスらしいチャンスを掴むことも出来なかった。

それでも第2セットに入ると、徐々にコートにも順応し始めたクルム伊達が“らしさ”を発揮しはじめる。互いにドロップショットやロブを多用した打ち合いから、バックのクロスを鮮やかに叩きこみ観客を沸かせたシーンなどは、美しさと激しさが同居するクルム伊達のテニスの真骨頂。「ポイントや勝ち負けとは関係なく、クレーでも多少は楽しむことができた」と言うように、テニスを楽しむ気持ちと「テニスの調子そのものは悪くない」という手応えが、この試合から持ち帰る収穫だろう。

「クレーを捨てた分、芝では頑張りたい」

視線は早くも、約一カ月後のウィンブルドンに向けられている。

写真は、1回戦でサマンサ・ストーサーに敗退したクルム伊達公子
Photo by Hiroshi sato

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