国枝慎吾(テニス)
パリで開催中の全仏オープンは6日、男子の車いす部門を行い、第1シードの国枝慎吾は、世界3位のマイケル・シェファーズを、6-4、6-4で破り決勝進出を決めた。

昨日とは打って変わって、厳しい戦いだった。対戦相手のシェファーズは、これまで何度も顔を合わせてきた、互いに手の内を知る選手。しかしこの日のシェファーズは、「こんなにサービスが良い選手だったっけ!? 」と驚くほどにサービスが好調だった。国枝は思うようにリターンから攻められず、シェファーズの重いスピンを掛けたショットにも苦しめられた。両者ともにコートカバー能力が高く、決まったと思われたボールが返球される。車いすテニスは2バウンドまでが許されているが、ほとんどのボールが1バウンドでコートを行き交うスピーディな展開。ショットが一本放たれるたび、両選手の激しい息遣いと、車いすの乾いた金属音が赤土の上に響いた。
 
そのような息詰まる打ち合いの中で、じわじわと主導権を握ったのは国枝だ。第1セットは、3-0のリードから追いつかれるも、勝負どころの重要なゲームを勝ち切れるのが、国枝が世界最強である所以だ。3-3からの相手ゲームをブレークし、第1セットは競った展開から抜けだした。

そのよい流れを、国枝は第2セットでも継続する。最初のゲームをブレークし、続く自身のゲームでは、ブレークの危機を凌いでキープ。これで流れを掌握し、一気に、4-0とリードした。しかしここでもシェファーズは、再び重いストロークを軸に巻き返す。相手に流れが傾きかけたが、最後は5-4からのサービスゲームをキープし決勝進出を決めた。

勝利を決めた瞬間は、天を仰ぎ会心のガッツポーズを決めた国枝。だが少し時間が経つと、口を突くのは反省の弁だ。

「4-0となったところで取りきれず、メンタルの弱さが出てしまった。クレーには若干苦手意識があるし、ここで勝つのが一番むずかしい。決勝はもっと調子を上げないと」

勝って兜の緒を締めるのは、狙うのが頂点のみだから。

「世界一位だという意識はあるので、誰にも負けたくないし、負ける訳はないという思いもある」

そのプライドを胸に、3年ぶりの全仏タイトルに挑む。

写真は、2年連続となる全仏決勝進出を決めた国枝慎吾
Photo by Hiroshi sato