奈良くるみ
今季最後のグランドスラムとなる全米オープンが26日に開幕。初戦に登場した予選あがりの奈良くるみは、73位のアレクサンドラ・カンダントゥを6-2、6-2で破り、同大会の初勝利を上げた。

勝利の瞬間叫んだ言葉は、本人も「良く覚えてない」と苦笑する。両手でガッツポーズを固め、158cmの身体から自然と湧きだした歓喜の叫び。2010年のウィンブルドン以来となるグランドスラム本戦勝利の喜びが、その姿に凝縮されていた。

快勝のスコアとは裏腹に、試合立ち上がりの展開は理想的とは言いがたい。相手に8ポイント連取を許し、瞬く間に0-2と出遅れる。悲劇的な結末も、試合を見ていた観客の脳裏に過ぎったはずだ。

だが本人は、そのような状況にあっても至って冷静だったと言う。

「相手が凄く良いプレーをしていたが、自分のプレーは悪くなかったので、あまりマイナスな気持ちにならなかった。今日はそのあたりの切り替えが上手くいった」

胃の痛むような予選を勝ち上がった実績が、奈良を精神的に逞しくしていた。

そこから先の展開は、正に「ゾーンに入っていた」と本人が認める通りのものだろう。6ゲーム連取で第1セットを取ると、第2セットも立ち上がりから5ゲーム連取。合計11ゲームを連続で奪い、たちまち相手を追い詰めたのだ。

ここで、後の無くなったカダントゥがリスク覚悟で攻勢に出て、2ゲームを取り返される。だがこの場面でも、奈良は冷静だ。

「自分が引いてしまうような、嫌な取られ方ではなかった。相手の開き直りも分かっていたので、5-2にされた場面でも割りと落ち着いていた」

最後は、相手のゲームをブレークしての白星奪取。ウィニングポイントは、最も得意とするバックのダウン・ザ・ラインだった。

ランキングが落ちる中でも戦い続け、手を伸ばし続けた末についに再びつかんだ、グランドスラムの勝利。3年ぶりの白星が「めっちゃ嬉しい!」のは当然だろう。同時に「ここまで来たからには、もう一回頑張りたい。次の試合をするのが本当に楽しみです」と、早くも気持ちは2回戦に向いている。その相手は、22位のソラナ・シルステア。

「凄く良いボールを打つ選手。でも上手く足を使って粘り強いプレーができれば、チャンスも出てくると思う」

今の奈良の可能性を誰より楽しみにしているのは、彼女自身だ。

※写真は、ガッツポーズを見せる奈良
写真/佐藤ひろし

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