奈良くるみ
ニューヨークで開催中の全米オープンは29日に女子シングルス2回戦を行い、奈良くるみが第19シードのソラナ・チルステアを7-5、6-1で破る金星を手にした。奈良のグランドスラム2回戦進出は初。4回戦では、第9シードで元世界1位のエレナ・ヤンコビッチと対戦する。

予選を突破し本戦出場した、奈良の勢いが止まらない。全米オープン前哨戦のトロント大会でも準優勝している好調チルステア相手に、試合時間1時間24分の完勝。勝利の瞬間、奈良はコーチたちが見守るスタンドにクルリと向き直り、拳を握りしめ言葉にならない歓喜の叫び声を上げた。

今の奈良の心身の充実が最も浮き彫りになったのが、第1セット中盤から終盤に掛けての展開だ。

「自分が引いたら相手に気持ちよく打たせてしまうので、コート内に入れるところは入り、前後の動きを心がけた」

試合序盤は、そのような戦術を思い描いていた奈良が理想的なプレーを展開し、瞬く間に3ゲーム連取。続く相手のサービスゲームでもデュースを繰り返し、4-0とリードするチャンスを握った。だがそこを凌がれると、潮目が変わる。

「3ゲームをリズム良く取り、そこからポンポンとペースを上げすぎてしまった」

そう奈良が振り返るように、単調なリズムの“殴り合い”では、強打自慢の相手に分がある。今度はチルステアが3ゲームを連取し、五分に追いつかれた。それでも、ここまで予選も含め1セットも落とさぬ勝負強さを発揮してきた奈良は、焦らない。

「やるべきことを、もう一度やろうと思った。ペースを落としてスピンを入れたりしながら、粘り強いプレーをする。そういう切れ変えが、今日は上手くできた」

チルステアは打ち合いに強い半面、力でねじ伏せようとしプレーが荒くなる脆さもある。緩急をつけながら広角に打ち分ける奈良のプレーに、チルステアの集中力が付いていけない。3オール以降は互いにブレークを繰り返す攻防となるも、6-5の相手ゲームで奈良が攻め、最後は20本以上の長いラリーを制して第1セットを掴み取った。
 
この精神戦を勝ち切ったことで、奈良は完全にチルステアの心を折る。第2セットは、ファーストサーブとリターン返球率ともに100%の圧巻のプレー精度を見せた奈良に対し、チルステアはミスを重ねる一方。大胆かつ緻密に相手の勝利の芽をつんだ奈良の勝利は、ランキング上では番狂わせだが、その実は必然だった。
 
3年ぶりのグランドスラムで、自身最高成績となる3回戦進出。夢のような快挙にも見えるが、奈良は「しっかりと現実として受け止められています」と断言する。

「今日の試合も、いつも通りのプレーができる精神状態だった。次の試合も、メンタルをコントロールし試合に入れば、良いプレーができると思います」

積み重ねた足跡を自信とし、その自信を実績に変え、確かな足取りで奈良くるみは、未知の領域へ歩みを進める。

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※写真は、勝利決め歓喜の叫びをあげる奈良
写真/佐藤ひろし