ニューヨークで開催中の全米オープンは5日に男子トップハーフの準々決勝2試合を行い、第1シードのノバク・ジョコビッチがミハエル・ユージニーを、6-3、6-2、3-6、6-0で退け準決勝に進出した。一方、昨年の優勝者であり先のウィンブルドン優勝者でもあるアンディ・マリーは、第9シードのスタニスラス・ワウリンカに、4-6、3-6、2-6で敗れ、連覇の夢は絶たれた。

試合が終わったその足で、シャワーを浴びることもロッカールームに立ち寄ることすらなく、センターコートからインタビュールームへと直行した。その行為、そして視点の定まらぬ青白い顔が、敗戦のショックの大きさを物語っている。

「リズムがつかめなかったとか、そういう問題ではない。長いラリーの時は、しっかりポイントも取れていたと思う。ただ今日は、リターンが決まらなかった。僕が最も得意なはずのショットが……」

マリーのその言葉通り、本来ならツアーで1~2を誇る強烈なリターンが、この日は浅くしか返らなかった。もっとも、本来の調子にほど遠かったのはリターンだけでない。サーブのスピードも上がらず、ワウリンカにリターンからの攻撃を許す。そしてリターンからでも積極的に攻めることこそが、ワウリンカの狙いだった。

「今日は風も強く厳しいコンディションだったが、僕の心は決まっていた。アンディを後方に押し込み、攻撃的に行く。彼は時々、守備的になりすぎることがある。そこが僕の狙いだった」

サーブが不調だったためリターンから押し込まれたマリーは、ベースラインの後方へと下がっていく。ワウリンカはバックハンドでダウン・ザ・ラインにショットを打ち込むと、すかさずネットに出てボレーを叩き込む。この試合最初の分岐点は、第1セットの第10ゲーム。8度のデュースの末にこれを落としたマリーはセットを失い、そのまま試合の主導権をも手放した。

その衝撃の試合から約3時間後に行われたもう一つの準決勝では、ジョコビッチが立ち上がりから快調に飛ばして2セット連取。第3セットでは、捨て身の反撃に出たユージニーに押され落とすものの、最後のセットは1ゲームも与えず試合に終止符。スコア以上の強さを印象づけて、準決勝に歩みを進めた。

マリーの敗退についてジョコビッチは、「グランドスラムで優勝した後、再びモチベーションや体調を整え、次のグランドスラムに備えるのは難しいこと」と、親友でもある同期のライバルを思いやる。同時に「スタン(ワウリンカ)は、非常に完成度の高い選手。昨年の優勝者を破り、自信を得ているはず。次の試合では、失う物の無い強みで勝利を奪いにくるはずだ」と、準決勝の対戦相手に警戒心を深めた。

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※写真は、シングルス準々決勝で昨年の王者マリーに完勝し、歓喜するワウリンカ
写真/佐藤ひろし