『大正製薬 リポビタン 第45回全国選抜高校テニス大会』の個人戦が博多の森テニス競技場で開催され、最終日の3月26日(日)は、個人戦の男女準決勝、決勝が行われた。
今年の個人戦は団体戦出場チームのNo1選手と、47都道府県推薦選手、福岡県特別枠推薦選手が出場する。団体戦出場選手は終了次第、指定箇所に入る変則ドローとなっており、今回は男女各12ブロックによる予選、28ドローによる本戦が行われ、優勝者にはUSオープンジュニアの予選ワイルドカードが授与される。
団体戦で決勝に残ったチームのシングルス1がドローに入る準決勝は、山本夏生(相生学院)が、団体戦で敗退した大分舞鶴の川上慶槇にリベンジを果たし決勝へ進出する。
一方、団体戦では勝っていた本⼭知苑(四日市工)は、武⽅駿哉(柳川)にフルセットで敗退を喫した。
決勝では、ファーストゲームで武⽅にブレークされるところからスタートした山本だが、「昨日、団体戦が終わった時から、すでに個人戦に頭を切り替えていた」と、武方にスキを一切見せなかった。
長身から繰り出すサービス。長いラリーには付き合わず、前に入ってスピードショットで先に展開し、ネットへ詰める。今大会の集大成ともいえるプレーで6-2 5-2とリードする。しかし、そこで彼を襲ったのは“ケイレン”だった。
これまでしっかり身体を使って打てていたボールがことごとくラインを割る。「焦ってもミスをするだけなので、今自分のできることをやろうと思った」という武方に5ゲーム連取を許し、第2セットを落とす。
第3セットでも先にブレークしたのは山本だった。4-1でリードした中、少し楽になっていたケイレンが、またもや彼のテニスを狂わせた。
武方は福岡での試合ということもあり、個人戦でも柳川の部活メンバー、OBらが集い、声援で彼を後押しする。「みんなが応援してくれていたので、それに応えたかった」という思いが、再びの5ゲーム連取でこの試合を制した。
泣き崩れる山本、歓喜する武方、この敗者と勝者のコントラストこそ、テニスの厳しさであり、魅力でもあった。
女子は、団体戦で選抜出場が叶わなかったインターハイ女王の津田梨央が予選を勝ち上がり、準決勝ではダブルベーグルという強さで決勝進出を決める。団体戦優勝校のエース、林妃鞠は相生学院の里菜央の粘り強さに体力を削られ、力尽きた。
もともと東海出身の里は、中学生まで津田と戦うことも多かったという。しかし、高校に入ってからは初めての対戦だった。コートで久しぶりに対峙した相手を「めちゃ強くなっていた」と正直に打ち明ける。
しかし「(選抜は)今回が最後だから、自分の最大限のプレーをしようと思った」という里が、津田の攻撃を交わす。準決勝で「ボールが浅いとポイントを取られていたので、とにかく深く返すようにした」という作戦が奏功し、7-5 6-4 のストレートで勝利を収めた。
津田は「インハイ優勝ということを、結構プレッシャーに感じ、いいプレーができないことがあった。でも今回は自分のプレーができれば勝てると信じて戦った」と、決勝までの本戦5試合をわずか6ゲームの失セットで勝ち上がってきた。
あまりの順調さゆえに、これまでより1本多く返してくる里に手こずった。「もっとドライブボレーなどを使って、前に入れていたら…」と悔しさを滲ませた。決勝まで競る場面が一度もなかったことが、テニスは時として影を落とす要因にもなりうる。
USオープンジュニア予選のワイルドカードを獲得した里は、「日本から出たことなく、アメリカに行くことも初めて。外国人選手と戦うことがほとんどないので、自分のプレーがどこまで通用するのか頑張りたい」と意気込んだ。
優勝、準優勝という結果以上に、明日へつながる学び多き戦いとなったのは、4人に共通しているのではないだろうか。
【男女個人戦決勝】
■男子
⼭本夏⽣(相生学院)6-2 6-2 川上慶槇(大分舞鶴)
武⽅駿哉(柳川)3-6 6-3 6-2 本⼭知苑(四日市工)
■女子
⾥菜央(相生学院)4-6 6-2 6-3 林妃鞠(四日市商)
津⽥梨央(名経大市邨)6-0 6-0 上野梨咲(山陽女学園)
【男女個人戦決勝】
■男子
武⽅駿哉(柳川)2-6 7-5 6-4 ⼭本夏⽣(相生学院)
■女子
⾥菜央(相生学院)7-5 6-4 津⽥梨央(名経大市邨)
3位
上野梨咲(山陽女学園)、林妃鞠(四日市商)、川上慶槇(大分舞鶴)、本⼭知苑(四日市工)