江口実沙の成長
女子シングルスの1Rで第1シードの江口実沙(北日本物産)が田中優希を6-0.6-2で一蹴した。昨年の全日本では準優勝した今西美晴(島津製作所)とファイナル・タイブレイクの戦いを見せた田中はしぶとい選手だ。その田中を全く寄せ付けなかった江口の強さは本物だ。
昨年はノーシードからベスト4まで勝ち上がった江口が今年は第1シード。つまり、この一年でランキングを急上昇させたということ。現在のWTAランキングは127位。先のアジア大会では銅メダルを獲得。強い選手は、伸びるときはぐっと伸びる。日本女子戦として4番目に付けている江口は今まさに「旬」を迎えようとしている。
「フィジカルが強くなったことで自分のできることが増えた」と成長を語る江口。全日本までの流れは絶好だ。彼女は会見で「勝てる実力がついてきた」と言うと同時に「第1シードのプレッシャーも感じている」とも言う。彼女の攻撃的なテニスが、この田中戦のように最後まで縮こまることなく発揮できるかどうか? その舞台は誰もがプレッシャーを感じるという全日本だ。
鈴木貴男の挑戦
午後3時の2番コートは立錐の余地もなかった。ファンのお目当ては、予選をクリアした鈴木貴男(イカイ)だ。全日本を3度制し、デ杯チームのエースとして日本男子テニスを牽引してきた鈴木。錦織圭登場前までは、日本の男子テニスと言えば「鈴木貴男」だった。
しかし、時の流れには逆らえない。1976年生まれの鈴木はこの全日本を38歳の予選選手として迎えることになる。JOPランキングは40位。しかし、鈴木のことを知っているテニスファンは予選を勝ち上がった彼が「何かを起こしてくれる」と期待して2番コートに集まった。
本戦1回戦の相手は志賀正人(フリー)。慶応大学を卒業してプロになってすぐにフューチャーズ大会優勝。しぶとさでは定評のある選手だ。ファーストを奪った鈴木は、セカンドでリードされるとセットを捨ててファイナル勝負を決意。それが功を奏して7-5.1-6.6-3で勝利。それは鈴木が世界の強豪を相手に選択していた彼流の「勝ち方」そのもの。全日本1回戦の舞台で、その切り札を出さざるを得ないところに鈴木の「今」があるが、それでも勝ちは勝ちだ。
試合後の会見では「セカンドは調子もメンタルもダメダメ。すぐに捨てようと思った。捨て方が良かったからファイナルの大事な場面でニューボールでサービスゲームを迎えることができた」と語った鈴木。まさに百戦錬磨。「簡単には立てる相手ではないけど、良いプレイができれば十分にチャンスがある」と2回戦の関口周一(イカイ)戦を見据える鈴木。快進撃が続けば今年の全日本は盛り上がること間違いなしだ。