関口周一(イカイ)にとって2014年は酷な年だった。夢はグランドスラム大会への挑戦。その夢に向けて2013年はそれこそATPポイントをかき集めた。2013年の最終ランキングは291位。そのランキングに夢を託してメルボルン(全豪)に飛んだ。しかし予選カット。現地に行きながらコートに立つことすらできなかった。
それでも関口はめげなかった。5月には自己最高の259位までランキングを上げる。このまま行けば、ウィンブルドン、全米の予選にかかるかもしれない。そんな矢先、連戦中に腰を痛めてしまった。災難は続く。6月には自転車事故で手首を痛めて2か月間のリハビリ生活。やっと癒えたときの目標は、グランドスラム大会ではなく、秋の全日本テニス選手権に変ってしまっていた。
気持を取り戻して全日本への練習していたある日、今度は足首を捻挫してしまう。アイシングしてくれたのは練習相手の鈴木貴男。その鈴木と全日本の2回戦で対戦することになったのだ。鈴木は関口が尊敬するテニス界のレジェンド。関口は「最大のリスペクトを持って」戦いに臨んだ。
「正直、ちゃんと試合ができるかどうか不安だった」と言う関口だったが、鈴木は「準備していることを感じた」と言う。ゲームが始まってから2ポイント目。セカンドできっちりバックの高いところにキックサーブを入れた関口。鈴木はそのポイントで「今日は厳しい戦いになる」と悟った。
試合は6-1.6-4で関口の完勝だった。鈴木が指摘した2ポイント目のサーブのことを問われると「僕からのメッセージがちゃんと貴男さんに伝わっていたんですね。良かった」とはにかんだ。関口にとって全日本のベスト8進出は初。次の対戦相手は、同い年のライバル江原弘泰(日清紡ホールディングス)。ジュニア時代から何度対戦したかわからない、という2人の一戦が楽しみだ。