日本ではもちろん、アメリカやヨーロッパでも「次のスター」として取り上げられているのが錦織圭選手。「錦織圭がトップ10に入ったとしても別に驚きはない」とTennisWeek誌の記者を始め、多くの人々が高く評価しています。
はたして、その錦織圭選手は2009年も活躍できるでしょうか?
錦織圭選手の活躍を祈りつつ、冷静に状況を分析すると、錦織圭選手の09年での活躍が、そう甘いものではないことが見えてきます。「錦織圭選手は09年に活躍できるのか?」の第1回の今回は、状況の分析を行なってみたいと思います。
※「錦織圭選手は09年に活躍できるのか?」は2部構成です。
⇒第1回「状況の分析と上記予想の理由」
⇒第2回「錦織圭選手が09年に優先すべきものについて」(今回)
ランキングはどうなるか?
09年の男子ATPツアーは、ランキングシステムに大きな変更を受けてます。錦織圭選手にとって、これがどう作用するのか、現時点ではまだわかりません。
今は、「トップ50を切る」とか、「トップ10入りだ」と威勢のいいニュースが目立っていますが、かなり好意的にシミュレートしないと、そういう数字は本来はなかなか出せないはずです。08年2月のデルレイビーチでの優勝のポイントがなくなれば、ランキングもまた大きく下がる可能性もあります。
08年はまだチャレンジャーに出ていたりしましたが、09年はツアーを中心に出るでしょうから、目に見えない身体的な負担は大きくなるでしょうし、研究され、対策を立てられた中で、もし、勝てない日々が続けば、精神的に焦りもするでしょう。メディアの中には「期待はずれ」と言うところが出てきてもおかしくはないでしょうし、ファンの中にもがっかりする人が出てきてもおかしくはありません。何より、本人も自分に大きな期待をしてシーズンに入ったとして、もし躓けば、大きく自信を失う可能性もあります。そうなれば、全てが悪循環となりかねません。
錦織圭選手はまだ発展途上の選手として見るのが客観的に正当な評価
繰り返しますが、09年の錦織圭選手はまだ発展途上の選手として見るのが客観的に正当な評価です。出始めの頃のナダルやジョコビッチ、あるいはフェデラーのように、凄い活躍をしたかと思えば、次の大会では1回戦でやられる、それが普通だと考えておいた方がいいと思います。
もちろん、すべてを覆して大活躍するシーンを見たい、というのも心理としてはありますし、その可能性もゼロとは言いません。17歳で全仏に勝ったマイケル・チャンのように、一つの大会で大爆発する、というシーンは十分考えられます。
現時点の男子ツアーは、一時より中堅層のレベルがやや低下しています。彼らが対錦織のプランを考えたところで、実行しきれない可能性も大いにあります。ですから、序盤を快進撃で勝ち抜いて、一気に頂点に迫る、という展開は十分に予測可能です。
錦織圭選手が09年に活躍できるかどうかの条件は次の3つでしょう。
・まずはサービスの確率を上げ、無理せずにサービスゲームをキープしていくこと。
・次にバックハンドのダウンザラインの精度を上げること。
・負けたとしても精神的に焦らないこと
が考えられます。
もし、序盤にツアーで負けがこめば、試合経験を積むために、チャレンジャーに戻る選択肢も視野に入れるべきでしょうし、それは決して後退ではないと考えられるべきです。
錦織圭選手の09年は飛躍よりも経験の蓄積を優先すべき
今の彼に重要なのは、とにかく多くの試合を経験して、その感覚を磨くこと。彼はすでに十分に上位と伍して戦えるだけの武器をたくさん持っているわけですから、あとはその使い方を覚えていくことだろうと思います。
ガスケがまだ10代だった05年、全仏でナダルと戦いました。大会前からこのカードは恐ろしいほど注目されていて、フランスのメディアはガスケ一色でしたし、当日のセンターコートは異様な興奮に包まれていました。
しかし、実際の試合でのガスケはナダルにまったく歯が立たず、敗れてしまいました。フランスのファンは落胆し、それに影響されたのか、ガスケもまたしばしスランプに陥ってしまったほどでした。
先日の有明で錦織と戦ったガスケは「まずは経験を積むことだ」と話していましたが、多分、この時の自分自身の経験からの言葉でしょう。
どんなことがあっても自信を失わず、すべてを吸収していく年。それが錦織圭選手の09年のテーマになると思います。もちろん、彼自身の中でも、自分への期待が高まっているのでしょうが、そこで焦って欲しくはありません。何も今年中にトップ50や、10にならなくても、まだ5年後も24歳なのですから、長い目でその成長と活躍を追っていく、というのもテニスファンの醍醐味のような気がします。
※「錦織圭選手は09年に活躍できるのか?」は2部構成です。
⇒第1回「状況の分析と上記予想の理由」
⇒第2回「錦織圭選手が09年に優先すべきものについて」(今回)