『デビスカップ』のファイナル予選1回戦「日本対英国』は、2日目の2月1日、ブルボンビーンズドームでダブルス1試合とシングルス2試合が行なわれた。初日の1勝1敗から、まずはダブルスで綿貫陽介(SBCメディカルグループ)/柚木武(イカイ)がニール・スクプスキ/ジョー・ソールズベリーに6-7(4)、6-7(3)で惜敗。しかし、西岡良仁(ミキハウス)がジェーコブ・ファーンリーを6-3、7-6(0)で退け、最後は錦織圭(ユニクロ)がビリー・ハリスを6-2、6-3で一蹴した。トップ2を欠いていた今回の英国チームだったとはいえ、添田豪監督は「この歴史あるチームに勝てたということは、僕が言うのもなんですけど歴史的快挙。僕自身がすごく感動しました」と、選手たちの戦いぶりを熱い言葉で称えた。

●綿貫陽介(SBCメディカルグループ)/柚木武(イカイ)6-7(4)6-7(3) ○ニール・スクプスキ/ジョー・ソールズベリー

 いずれも元ダブルス世界1位の実績がある英国ペアに挑んだのは、26歳にして初の代表入りとなった柚木と、2018年からの代表歴がある同い年の綿貫。196cmという日本人離れした長身と左利きを武器に、昨年チャレンジャー3大会で優勝するなど頭角を現した柚木は、「強がっていたけど実は緊張して吐きそうでした」と全ての試合が終わってからオンコートのインタビューで明かしたが、綿貫との初めてのペアはグランドスラム優勝経験もある35歳と32歳のベテランに食い下がった。

デ杯初出場の柚木と、初のペアリングとなる綿貫は、英国のダブルス巧者にタイブレークで食い下がった。写真:長浜功明

 スクプスキが「二人ともサーブが良かった」と評したように、綿貫のサービスゲームはまったく危なげなく、柚木も何度かブレークポイントを握られながらもしのいで毎回キープ。両セットともタイブレークに持ち込んだが、英国ペアがソツのないネットプレーなど熟練の技を見せ、勝負どころで日本ペアは及ばなかった。

 しかし、モニターで見ていた錦織が、「両方取っていた可能性もあった。(柚木は)将来性のある選手だなと思った」と感じた健闘は、続くシングルスの展開に無関係ではなかっただろう。

○西岡良仁(ミキハウス)6-3 7-6(0) ●ジェーコブ・ファーンリー

 あとがなくなった日本の望みをつないだのは、ここまで唯一の白星を得ている西岡だった。前日、錦織圭をストレートで沈めたファーンリーの爆発力は危険だったが、西岡はその強打に押されることなく、ショットのバリエーションを生かした柔軟なプレーでラリーの主導権を握った。

前日の試合で分析を重ねた西岡は、相手エースのファーンリーをストレート下し、最終戦の錦織へバトンを渡した。写真:長浜功明

 前日の錦織との試合や事前の情報から、「かなり“解像度”の高いイメージができていた。実際に試合に臨んでみたら、そのイメージとプランがはまった」という。第1セットは第5ゲームで2度のブレークポイントをしのぎ、続くゲームの初ブレークにつなげた。このリードを守って6-3でセットを先取。パッシングショットやロブの精度も高く、その勢いのままに第2セットは第3ゲームと早い段階でブレークに成功。ミスが少し出始めたところを攻め込まれ、第6ゲームはスマッシュやパス、ボレーなどを正確に決められてブレークバックを許したが、相手に傾きそうな流れは食い止めた。

 第12ゲームでセットポイントを握られた場面はサービスウィナーでしのいだ。タイブレークは1ポイントも与えない集中力を見せ、チームに向けて全力のガッツポーズ。会場中を盛り上げ、ファーンリーは「(西岡は)終始安定していた」と称えるしかなかった。

ファーンリーは西岡の分析眼とその対応に舌を巻いた。写真:長浜功明

○錦織圭(ユニクロ)6-2 6-3 ●ビリー・ハリス

 ダブルスの健闘、そして西岡の頼もしいプレーは、メンバー最年長でありもっとも経験も実績も豊富な錦織を奮い立たせた。

 前日のファーンリーとの試合は、「この半年で一番悪いくらいだった」という錦織にとって、そこから短時間で「どうにか自分に自信を持たせないといけない」状況は、簡単なことではなかったはずだ。普段のツアーでは、負けた翌日にまた試合をしなくてはならないケースはほぼない。それでも不安を引きずる錦織ではなかった。

前日の敗戦を一掃する戦いぶりを見せた錦織。勝負のかかった大一番をものにした。写真:長浜功明

 世界ランク129位のハリスに対し、「焦らずじっくりプレーして、攻められるところはしっかり攻めてというプレーができた」と、安定したサービスキープに加えてリターンからの攻撃も功を奏す。第1セットは6-2でものにした。第2セットは第4ゲームでブレーク。次のサービスゲームで0-40から5ポイント連取したところが最後の山場となった。

 マッチポイントでハリスのリターンがネットにかかると、安堵の表情を浮かべた錦織。コートサイドから飛び出して抱きついたのは西岡だった。西岡のデ杯ファイナルへの強い思いは錦織も知っている。だからこそ、「みんなの熱い思いと、2連覇したイタリアの強さを見て、日本をどうにかまたワールドグループに戻らせたいという気持ちは徐々に高くなってきた」。

 そして、もう一人、ファイナルへの並々ならぬ気持ちをアピールするのは綿貫だ。

「テニスで国を背負って戦うのはこのデ杯しかない。自分自身が一人のプレーヤーとしてデ杯ファイナルに行ってみたいという気持ちは強いですし、テニスを(日本で)もっとメジャーにしていくためにも、デ杯のファイナルに行くということは大きいんじゃいかなと思っています」

ファイナル進出に向け、チーム力、そして熱い思いも高まっている日本チーム。ドイツとの戦いに期待。写真:長浜功明

 そのファイナル進出をかけた予選2回戦の相手はドイツ。今回は出場していなかった世界2位のアレクサンダー・ズベレフのほか、ダブルスでもトップ10に2人を擁する強豪である。9月、さらにレベルアップした日本チームの戦いが楽しみだ。

試合の様子はU-NEXTで!見逃し配信もあり
https://www.unext.co.jp/press-room/davis-cup-live-2025-01-20 

取材・文:山口奈緒美 写真:長浜功明