穂積絵莉(橋本総業ホールディングス)加藤未唯(佐川印刷)組は今年の全豪オープンで4強になったペア。
日本人ペアとして大会史上初。
グランドスラム大会では2002年フレンチオープンの杉山愛/ 藤原里華組以来15年ぶりとなるベスト4進出の快挙を達成した。
岐阜で行われたITFカンガルーカップ、前週はITFイタリアと2週連続優勝、今週行われているイタリアンオープンでは厳しい1回戦に勝ち16強になった。
イタリアンオープン女子ダブルスドロー
彼女たちのフレンチ・オープンにおける期待をテニスライターの内田暁に書いてもらった。
穂積加藤組 光と影
岐阜のカンガルー国際女子からローマへと続いた連勝街道は、イタリア国際の初戦で強豪ストーサー/ジャン・シューアイ組を破った後に、スレボトニック/スピアーズの老獪さの前に途絶えた。
全豪ベスト4の栄光は、穂積と加藤の二人に、光と影の両方をもたらした。
光はもちろん、自分たちにそれだけの力があるという自信と、大舞台やトップ選手にも物怖じしないだけの場数。
今大会でも、単複両方でグランドスラムタイトルを持つストーサーとの対戦にも、
「ふーん、ストーサーとやるんだ……という感じ」(加藤)と、全く名前負けしない。
現にこの試合での二人は、ストーサーのトップスピンをも封じ込める穂積の強打と、軽快かつ豪快なバックのジャンピングボレーを決める加藤の機動力で6-2,6-4の快勝を手にしている。
一方で光が生んだ影は、成功体験の幻影だ。
特に穂積は全豪のシングルスで、いつも以上に緩いボールを用いて勝った実績に、本来の持ち味である攻撃力を束縛された。
いつの間にか「消極になってしまっていた」プレーは、ダブルスでも顔を出す。
全豪後はWTAツアーはおろか、ITFですら勝ち星に見放される時期が続いた。
「私が思いっきりボールを打ててないので、未唯(加藤)も前で動きにくかったと思う」。
迷いの中で自分のテニスそのものについて考え、コーチ陣とも膝つき合わせ話し合った末に
「私らしい攻撃的なプレー」の原点回帰で再始動したのが、岐阜であった。
その穂積のストロークを起点として、前衛の加藤が自在に舞い快勝したのが今大会の初戦なら、
二人の弱点である“前衛・穂積、後衛・加藤”の陣形を攻められ勢いに乗れなかったのが2回戦。
「わたしたちは波が大きくて。悪い日はITFでも勝てなかったり、でもすごく良いとグランドスラムでも勝てる。
その波をなくすのが、今のわたしたちに必要なこと」。
次のステージに上るための課題を、穂積はそう断言する。
そのための鍵となるのが、「集中力」。
「ミスが続くと(集中力が)切れちゃう。
ミスした時に、もっと早く切り替えなくちゃいけないのかなと思う」と、加藤もパートナーに同意した。
途絶えた連勝街道を、再びつなぐべく進む先は、赤土の季節の集大成であるローランギャロス、全仏オープン。
「クレーでのプレーの自信は?」
そう問われて加藤は、「いいんですけど……イレギュラーが鬱陶しい」とポツリ。
すかさず穂積が「そこはね~、わたしがタッチできるところではないから」とツッコミでカバー。
公私に及ぶこの持ち前のコンビネーションで、パリでも課題克服と上位進出を目指す。
by内田暁 photo佐藤ひろし