<全仏オープンテニス 女子決勝>(通称:ローランギャロス)

6月10日(土)
フレンチ・オープン女子決勝が行われ、20歳になりたて、世界ランキング47位のJ・オスタペンコ(ラトビア)が第3シードのS・ハレプ(ルーマニア)を4-6、6-4、6-3で破りローランギャロスの女王となった。

初のツアー優勝がなんと全仏オープン、
優勝賞金210万ユーロ、約3億円近くの大金も手にした。
1968年のオープン化以降で全仏オープンをノーシードで制した選手は初めての快挙だ。
5歳から本格的にテニスを開始し、12歳まではダンスとテニスをしていた。ダンスはフットワークを鍛えるトレーニングの一つとして今もやっていると言う。

ハイリスク・ハイリターンの攻撃テニス、会見中もいつも笑顔を絶やさない可愛いプレーヤーだ。
これまでグランドスラム大会では3回戦を突破したことがなく、2015年の全仏は予選で敗れ、2016年は1回戦で大坂なおみに敗れている。

敗れた第3シードのハレプは準々決勝で第5シードのE・スイトリナ(ウクライナ)に第1セットを3-6で落とし、第2セットも1-5だったが,そこから大逆転するなどしぶといプレーで決勝進出。
25歳のハレプは優勝したら週明けの月曜日に発表される最新ランキングで世界ランク1位が決まっていたのだが。

グランドスラム大会では3度にわたり4強入り。ツアー・タイトルは通算15勝。
シャラポワに負けた2014年に続く2度目の準優勝だった。

決勝に残ったオスタペンコは昨年の全仏オープン、大坂なおみが1回戦で6-4 7-5で勝利している相手。
そしてハレプ(ルーマニア)は大坂なおみが3回戦で6-4 2-6 3-6と逆転負けした相手だった。
実際に対戦した二人の決勝戦を見て、19歳の大坂なおみも「私もグランドスラム大会で活躍できる」と思ったことだろう。
頑張れ大坂なおみ!

決勝の様子をテニスジャーナリストの内田暁に現地よりレポートしてもらおう。

どよめきと歓喜の叫び声と共に、赤土で若き女王が誕生した

「今日のわたしは、アドサイドからのリターンで何本もウイナーを奪っていた。だからマッチポイントでも、もちろん狙っていったわ」。
あどけない笑顔の20歳は、大胆にも言い放つ。夢に見たグランドスラムタイトルを奪い取った一撃は、彼女が決めたこの日54本目のウイナーだった。

2日前に20歳になったばかりのエレナ・オスタペンコは、テニス界では期待の若手ではあるが、世間的にはまだ無名に近い47位。その新参者は決勝の大舞台で、自分が何者であるかを最初の一打で観衆に強烈にアピールする。177cmの身体を大きく捻り、短く鋭い叫び声をあげながら、全力でボールをフラットで引っ叩く。その猛攻の一打ごとに、客席からは驚きと好奇の声が湧き上がった。ウイナー2本を含む、4連続ポイントでのブレークスタート。初のグランドスラムタイトルに挑む20歳には、緊張も恐れも全く無かった。

しかし第1セットは最終的に、世界4位のシモナ・ハレプが手にしている。ショットの威力では劣るものの、ハレプには圧倒的なフットワークと、巧みに球種とコースを打ち分け相手を揺さぶる技があった。
第2セットも、経験と安定感で勝るハレプ優勢の展開が続く。第2ゲームをブレークし3-0とリードしたハレプは、続くオスタペンコのサービスゲームでも、3度のデュースを手にしていた。
ただこの局面で、失うもののない挑戦者は、考え方を変えたという。
「この試合を楽しもう。最後の1ポイントまで全力で戦おう」
その姿勢が、試合の流れを大きく変える。全力で左右に打ち込む強打はラインの内側を捕らえ、ハレプを守勢に追いこんでいく。あるいはハレプにしてみれば、ポイントが転がり込んでもそれは相手のミスのため、自分のリズムを築けない。熱狂した観客のウェーブがスタジアムを2周、3周と回る中、フォアの豪快なウイナーと共に20歳が第2セットを奪い返した。

こうなると、もはや若い勢いは止まらない。なんとか状況を変えようとハレプは緩いボールを使い始めるが、これがむしろ、相手の攻勢に拍車を掛けた。ゲームカウント3-3からのハレプのサービスゲームで、オスタペンコがブレークに成功。さらには最後のゲームでも、彼女はバックのリターンウイナーを叩き込み、優勝の栄冠を掴み取った。

今大会の中でも戦うたびに強くなる彼女の急激な成長速度は、この全仏オープン優勝が、初のツアータイトルであるという事実にも反映される。ちなみに、オスタペンコ以前に同じ偉業を成したのは、20年前の6月8日に、やはりこの全仏で優勝したグスタポ・クエルテン。そしてオスタペンコが生まれたのは、まさにその日なのである。
「私が生まれた日に、彼(クエルテン)が優勝したのは知っていたわ。凄い幸運よね。きっとラッキーナンバーなのよ」。
運命に導かれたかのような、鮮やかなフィナーレだった。

(記事 内田暁 photo佐藤ひろし)

<<準決勝>>
〇OSTAPENKO(LAT) 76(4) 36 63 ●30]BACSINSZKY(SUI)
〇3]HALEP(ROU) 64 36 63 ●2]PLISKOVA(CZE)

<<準々決勝>>
〇OSTAPENKO(LAT) 46 62 62 ●11]WOZNIACKI(DEN)
〇30]BACSINSZKY(SUI) 64 64 ●13]MLADENOVIC(FRA)
〇3]HALEP(ROU) 36 76(6) 60 ●5]SVITOLINA(UKR)
〇2]PLISKOVA(CZE) 76(3) 64 ●28]GARCIA(FRA)

大会オフィシャルHP:ローランギャロス2017
賞金総額:€35,981,500, (45億円)
優勝賞金:€2,100,000(2億7千万円)
準優勝: €1,060,000(1億4千万円)
ベスト4: €530,000(7千万円)
ベスト8: €340,000(4千300万円)
4回戦: €200,000(2千500万円)
3回戦: €118,000(1千500万円)
2回戦: €70,000(900万円)
1回戦: €35,000(450万円)
本戦128ドロー、赤土クレー
会場:Rolandgarros
期間:5/28-6/11,2017
パリ現地時刻(時差-7時間)

<<女子2回戦>>
〇10]V.WILLAMS(11位USA) 63 61 ●奈良くるみ

<<女子1回戦>>
〇奈良くるみ 36 75 64 ●W]A.ANISIMOVA(267位USA15歳)
〇Q]S.ERRANI(元5位ITA) 76(7) 61 ●土居美咲
〇Q]VAN UYTVANCK(113位BEL) 63 75 ●大坂なおみ
E.BOUCHARD(元5位CAN) 26 63 62 ●尾崎里紗
〇28]C.GARCIA(27位FRA) 62 62 ●日比野菜緒
T.TOWNSEND(121位USA) 64 60 ●Q]加藤未唯
女子シングルス・ドローPDF

ダブルス優勝賞金:€540,000(7千万円)
準優勝: €270,000(3千500万円)
ベスト4: €132,000(1千700万円)
ベスト8: €72,000(1千万円)
3回戦: €39,000(500万円)
2回戦: €21,000(270万円)
1回戦: €10,500(140万円)

<<女子ダブルス3回戦>>
〇フリプケンス(BEL)/スキアボーネ(ITA) 63 62 ●日比野菜緒/ロソルスカ(POL)

<<女子ダブルス2回戦>>
〇日比野菜緒/ロソルスカ(POL) 67(4) 63 63 ●(CRO)/ロディオノワ(AUS)
〇バーティ/デラクア(AUS) 64 61 ●18]穂積絵莉/加藤未唯

<<女子ダブルス1回戦>>
〇18]穂積絵莉/加藤未唯 75 63 ●Muhammad/タウンゼント(USA)
〇日比野菜緒/ロソルスカ(POL) 06 76(3) 76(10) ●ヤンコビッチ(SRB)/バンダウェイ(USA)
〇クドゥリャフツェワ/パノワ(RUS) 76(6) 64 ●青山修子/ Yang(CHN)
〇Liang(CHN)/王薔(CHN) 2-1 ret. ●土居美咲/荘佳容(TPE)
〇チェペロバ(SVK)/謝淑薇(TPE) 62 63 ●奈良くるみ/尾崎里紗
女子ダブルスドローPDF版

(記事内田暁、塚越亘, KYOKO, Y.Morishita, T.Terashima, photo/H.Sato)