★男子テニス・グランドスラム大会
■7,884,000ユーロ Roland Garros 2011, Paris, France (Red Cray)
5月22日、フランスのパリで全仏オープンが初日を迎え、日本の錦織圭(21歳)が台湾の盧彦勳(ルー・エンスン、27歳、台湾)と対戦し、6-1、6-3、6-4のストレートで勝利をおさめた。
大会直前に体調を崩し(当初は腎臓結石と診断されたが、その後、直接の原因は胃炎だったことが判明)、1週間ほどテニスができず、体調の回復具合が心配された錦織だったが、序盤から冷静なプレーを展開。ルーのサーブが不調と判断するや、第1セット第4ゲームでは満を持してルーの2ndサーブに襲いかかってブレークに成功すると、そのまま流れを掌握して離さず、勝ち切った。
相手のルーは、昨年のウィンブルドン選手権ではアンディ・ロディック(28歳、米国)を下してベスト8に進出したアジアナンバー1プレーヤー。しかし、今季は開幕後6大会連続で1回戦負けを喫するなどややスランプ気味。だが、不調とはいえ、インディアンウェルズでヒューイット、マドリードではベルダスコを下すなど、集中した時の強さは相変わらずで、勢いに乗せてしまえば危険な相手なことに変わりはない。
錦織は「彼とは初めての対戦だったが、リズムが単調なのは知っていたので、相手の得意なペースにならないようにすることを心がけた」と試合後に語っているのだが、彼自身も体力的な不安は大きかったのだという。
錦織にとって幸いだったのは、今季のルーが、クレーで必要な忍耐力のチューニングを十分にできていなかったこともある。早めに仕掛けるのはスタイルとしては攻撃的でいい。しかし、球足の遅いクレーでは、仕掛け時の判断が勝負を分けることが多い。錦織は、ルーの攻撃に対して粘り強く反応してボールを返し、時にはカウンターで逆襲して、ルーに簡単にポイントを許さない。錦織はスライスとスピンをうまく混ぜながら緩急とバウンドの高低を使い分け、ルーに的を絞らせず、試合をコントロールした。ルーは次第に焦りの色を濃くし、気がつけば、ミスの山を築かされていた。
第2セット以降は、ルーもラリーの中で徐々にループ系のボールを混ぜるなど、どうにかして主導権を取り戻そうとしていたのだが、錦織にすべて対応されてしまい、最後は打つ手を失った。錦織が試合巧者ぶりを存分に示した一戦だったと言っていいだろう。
2回戦の相手は第31シードのセルジ・スタホフスキ(25歳、ウクライナ)に決まった。ネットプレーを得意とするテクニシャンタイプの選手で難敵。「一時は全仏でプレーできない可能性もあったし、体力的な不安は今もあるが、初戦を3セットで終われて良かった」と錦織は笑顔を見せた。「まずはケガをせず、今のプレーの質をキープして、トップ50以内でシーズンを終えたい」。そう語る錦織は、順調な一歩目を踏み出した。
現地レポート:浅岡隆太