24日、全豪オープンは男子シングルスの準々決勝が行なわれロジャー・フェデラー(30歳、スイス)が6-4 6-3 6-2のストレートでフアンマルティン・デルポトロ(23歳、アルゼンチン)を下し、ラファエル・ナダル(25歳、スペイン)はトマーシュ・ベルディハ(26歳、チェコ)に6-7(5) 7-6(6) 6-4 6-3の逆転勝ちで4強に進出した。


フェデラーはデルポトロのフォアの強打を時間をかけてじっくりと潰し、最後は自信を打ち砕く形での完全勝利だったのだが、何よりも動きにキレがあった。打点に正確に入り込むフェデラーならではの、飛ぶようなフットワークが復活していたのも大きい。悪い時には力んでネットにかけることが多いフェデラーだが、この日は常に正確に打点に入れており、そうしたショットがほとんど出ず、デルポトロを前後左右に自在に振り回した。
と言っても、デルポトロのテニスが悪かったというわけではなく、スタッツ上での両者の違いは少ない。要所でのプレーの質、追い込まれた時のショットの種類の多さでフェデラーが上回った結果だった。「お互いのプレーを良く知っている同士の対戦だから、最初が肝心だと思ったのさ」とフェデラーは言う。フェデラーにとってはこれがプロ通算で1000試合目の記念となる一戦。「1000試合か。1000勝じゃないところが大きな違いだね」と笑顔を見せた後、「いずれ1000勝を祝いたいね」と続けた。フェデラーの勝利数はこれで
814勝目。1000勝まではあと190勝が必要だが、今の調子をあと3年ほど維持できれば、それも夢ではないだろう。そんなことさえ感じさせる動きの良さを、この日のフェデラーは見せつけた。
ナダルはベルディハとの対戦だった。過去の対戦ではナダルの10勝3敗。ベルディハが勝ったのは2006年のマドリードが最後で、以降丸5年、9連敗中で、この日の敗戦で10連敗となった。こうした関係性を覆すのは、並大抵ではない。ナダルからすれば「負けない相手」だと精神的に相手を飲んだ形を作りやすいし、逆にベルディフはちょっとしたことでも相手に飲まれてしまう。
 
だが、試合は途中までは攻めるベルディハと、守るナダルという構図だった。このレベルのテニスの試合では、両者によほどの力量さがない限り、ただ守るだけでは相手には勝てないものだが、ナダルはポジションを大きく後方に下げてベルディハの猛攻に耐えつつ、期を見ては逆襲に転じるカウンターテニスで相手のボールを受け止め切った。「試合の最初は少しナーバスになっていて、ボールも浅く、動きも悪かった。ベルディハのような凄いハードヒッターで、フラットなボールを打って来る相手には、うまくリズムが取れないことが多いから苦労したよ」とナダルは試合後に話している。「とにかく、お互いに凄くレベルの高い試合をしたと思う。勝てて本当に良かった」。
第1セットはタイブレークでナダルが求めたチャレンジが、プレーを継続していたと見なされて認められず、結果としてそれがミニブレークにつながってしまったことが原因で取られた形だった。並の選手なら、あそこで崩れてしまうところだが、ナダルは逆に第2セット以降はその集中力を上げた。すべてのボールに食らいつき、ベルディハがよほど完璧に組み立てないと、ナダルから1ポイント取るにも苦労するような展開に持ち込んだのだ。
 
さて、準決勝はナダルとフェデラーによる、世に言う「クラシック・マッチ」となった。二人の対戦成績はナダルから17勝9敗。「彼との試合はいつだって特別だ。今までは決勝で戦うのがほとんどで、たまに準決勝とかもあったけど、そういう意味だけじゃなくて、彼との試合そのものが、僕にとっては特別なんだ」とナダルは言葉にし、「今日のロジャーの試合も素晴らしかった。世界でも最高の選手の一人であるデルポトロを相手に本当に凄いプレーをしていた」と続けた。「すべての試合は違う試合だ」。ナダルはいつもそう話し、過去は過去であると強調する。それは、選手たちは常に自分たちを進歩させているという気持ちから出る言葉だ。ナダルとフェデラー。テニス史に確実に残る両者が、そのエ
ンジンの回転数を上げて来た。