全豪オープン男子決勝が29日に行なわれ、第1シードのノバク・ジョコビッチ(24歳、セルビア)と、第2シードのラファエル・ナダル(25歳、スペイン)が対戦。5時間53分のロングマッチを制したのはジョコビッチだった。
5-7 6-4 6-2 6-7(5) 7-5。このスコアが示すとおりの激闘。しかし、激しい打ち合いというよりも、お互いのボールの読み合いとボールへの執念、気持ちの強さのぶつかりあいと言ったほうが適当だろう。
ジョコビッチはナダルに対して直近では6連勝中。この試合でもナダルの打つボールのコースを的確に読み、待ち伏せして打ついつもの展開が数多く見られた。それは例えば、昨季の平均で57%とツアーでもトップレベルを誇るナダルの2ndサービス時のポイント率が、わずか45%に抑えこまれているところに象徴的に現れている。
しかし、序盤のナダルは相手に読まれているという要素を逆手に取っていた。クロス一辺倒だったバックではストレートを多用。サービスのコースもボディとセンターを中心に配球して簡単に的を絞らせず、ジョコビッチの読みを外そうと試みていた。
だが「まだ未完成の状態」と大会中にも自身で語っていた通り、ナダルが構築中のバックのダウンザラインの強打や、ポジションを上げての攻撃テニスは確率が高くなく、コースも甘くなりがちだった。また、ジョコビッチに対して連敗しているという意識が、勝負を分けるような大事な場面になればなるほど心理面に影響していたのだろう、切所では、今までと同じコース、ショットでの安全策を選択してしまい、それをジョコビッチに待ち伏せされた。
第4セットあたりからはジョコビッチにスタミナ切れの傾向が見え、足が止まり始めていたのだが、ナダルにはまだまだ余力があるように見えた。最終セットも第6ゲームで先にブレークしたのはナダルだったが、第7ゲームではジョコビッチにサービスのコースを読まれて逆襲され、ブレークバックされてイーブンに戻された。ナダルはその後もジョコビッチを攻め立てたのだが、トドメを刺し切れない。ジョコビッチは足が動かない分だけチャンスボールでは即ポイントを取りにいく形で展開を早めており、また、ショットに迷いもなくなっていた。
第11ゲームのナダルのサービスゲーム。パワーとスピードで押していたのはナダルだったが、ジョコビッチはナダルのサービスを読み切って逆襲し、ブレークして6-5と王手をかける。
続く第12ゲームでもナダルは勝負を諦めず、何とか抵抗を試みたのだが、あと一歩のところで守備的になり、ブレークポイントを握った場面でも攻めきれなかった。最後はナダルのバックのリターンが甘く入ったところを、ジョコビッチがフォアで逆クロスにエースを放って試合は終わった。
ジョコビッチにとっては、ウィンブルドン、全米に続いてのグランドスラム3連勝。これはすべて決勝でナダルに勝って果たした連勝だが、今回が最も苦戦の末の勝利だったと言っていい。「ラファはテニス史上に残る偉大な選手。そして今夜は彼と一緒に歴史を作った。残念ながらテニスには2人の勝者はいないけど、彼もまた勝利に匹敵するプレーをしたと思う。彼とまた決勝の舞台で戦いたい」とジョコビッチはスピーチしたが、彼の言葉の通り、最後の最後まで、勝敗はどちらに転がるかわからない試合だった。
ナダルもこのまま負け続けるつもりはないはずだ。ジョコビッチという新たな標的に向けて、そのテニスを確実に進化させてきている。
この全豪は、何かの結論ではなく、今季の両者の激しい戦いの第一幕と考えた方がいい。男子のテニスは、また新しいライバル物語を作り出してきた。
※写真は、ジョコビッチ、クリックで拡大