2月10日から、兵庫県のブルボン・ビーンズドームで開催されるデ杯ワールドグループ1回戦。
日本は全豪ベスト8、世界ランキング自己最高の20位を記録した錦織圭(22歳)をエースに、ハワイのチャレンジャー大会で優勝し、やはり自己最高の88位に付けて好調の添田豪(27歳)、全豪では1回戦を勝ち抜く活躍を見せた伊藤竜馬(23歳)、昨秋のインド戦での日本勝利の立役者である杉田祐一(23歳)の4人がメンバーに選出され、文字通り、最強の布陣で27年ぶりのワールドグループ初戦に臨む。
一方のクロアチアは本来のエースであるマリン・チリッチ(23歳)がヒザの故障で戦線離脱中のため代表に選ばれず、また、ベテランのイワン・リュビチッチ(32歳)は昨年のセルビア戦を最後に代表引退を表明したためメンバーには入っていないが、55位で強打者のイワン・ドディグ、43位でテニス界最強のビッグサーバー、イボ・カロビッチ(32歳)以下、若手のアントニオ・ビーチ(24歳、173位)、ベテランのダブルス巧者ロフロ・ゾフコ (31歳、ダブルス世界ランキング 86位)とバランスのいいチーム編成で、単複に穴がなく、油断していていい相手ではない。
日本としては錦織の2勝を計算しておきたいところだが、そう楽観もできない。強烈なストロークの持ち主で、粘り強さを持つものの、錦織の能力をもってすれば特に癖もなく対戦しやすい正統派のストローカーであるドディグはともかくとして、カルロビッチが問題だ。
カルロビッチのサービスは、速度でも世界最速を記録した猛烈さがあるが、それ以上に厄介なのは角度。センターへのエースは誰でも打てるが、彼の208cmの身長による打点の高さは、ワイドにもフラットに打ち抜いてエースが取れるため、200キロを超えるサービスをコートのどこにでも狙えることに加え、セカンドサービスでも角度がつく分だけ猛烈に跳ね上がる。昨年の1試合あたりのサービスエース奪取率が17.1本とツアーでもダントツなのは、彼が高さのメリットを最大限に生かしたプレースタイルを完成させているからだ。
錦織から見た時に、カルロビッチと同じタイプの選手との対戦経験は2010年ワシントンの予選で、南アのケビン・アンダーソン(25歳)との対戦があるが、錦織が勝ってはいるものの、フルセットに持ち込まれる苦戦を強いられている。各セット1度のブレークが命取りになるだけに、緊張感の高い戦いとなる。
仮に錦織が2勝を確保したとして、問題は3勝目をどこで挙げるかだが、添田が今年1月のインドのチェンナイの大会で、ドディグ相手に勝っているのが好材料としてはあるが、日本がナンバー2に誰を起用するのかは直前まではわからない。初日に全豪で1回戦を突破するなど、大舞台に強い伊藤を入れて添田を温存するという手もあるし、また、インド戦と同じく杉田をドディグに当てて粘らせ、相手の体力を削るというのも作戦としては考えられる。竹内映二監督の添田への信頼は厚く、添田をジョーカーとして起用できるのが日本チームの強みと語っていたこともあり、直前まで作戦は読みにくい。
また、昨秋の楽天オープンでは竹内監督以下、日本チームの関係者がドディグの試合を偵察していたこともあり、すでに対策済ということであれば、色々な作戦も考えられるだろう。
問題は、ブルボン・ビーンズドームに空調が存在しないこと。臨時でヒーターを導入することは決まっているが、それとてあくまでも観客用の急造施設で、真夏のオーストラリアなどでプレーしてきたばかりの選手にとって、真冬の気候には変わりがない。最も心配なのはボールだ。寒くなるとどうしてもボールが硬くなり、飛びが鈍るため、エースは出にくくなると言われるが、パワーに勝る相手との勝負では不利になりやすい。
とはいえ、デ杯ではホームの有利さを最大限に生かしたい。それは観客の声援もその大きな要素。デ杯では一般のツアーと違い、インプレー中以外での応援に関しては、非常に高い自由が認められている。
また、ヨーロッパや南米の国同士の対戦では、会場はさながらサッカー場のようにホームへの応援一辺倒になることも多く、対戦ごとのホーム&アウェー方式のため、個人戦と違いアンフェアなこととは見なされない(ただし、サービス時に声を上げるなど、相手を妨害すると見なされた場合にはチームの失点となるので、常識と相手への敬意は忘れてはならないということだけは注意したい。インプレー中以外の声援であれば、ほとんど問題にされた例はない)。
会場を訪れるファンは、日本のチームカラーである赤のウェアを身にまとっていくのもよし、仲間同士で応援歌(サッカーのサポーターズソングのようなもの)を準備して、プレーの合間に歌うもよし、会場全体で日本チームを後押しする空気を作りたい。
「デ杯では何が起きるかわからない」。これは日本のみならず、世界中で同じことが言われ続けている。1回戦を勝てば、ドイツ対アルゼンチンの勝者との準々決勝に進むだけでなく、来季のワールドグループ残留も自動的に決定する大事な1回戦。
日本チームの活躍をテニスファンで盛り上げよう。