米国フロリダ州のマイアミで開催中のソニー・エリクソン・オープン(賞金総額$4,828,050)は、現地時間の21日に女子シングルス一回戦を行い、日本のクルム伊達公子が、元世界女王のビーナス・ウィリアムズ(アメリカ)と対戦。ビーナスの強烈なサーブと、長い手足を利したネットプレーに手を焼いたクルム伊達は、0-6、3-6のスコアで敗退した。
グランドスラム7つのタイトルを誇るウィリアムズは、昨年夏にシェーグレン症候群(自己免疫疾患の一種)と診断されたことを告白し、以降は公式戦から遠ざかっていた(その間、エキシビジョンとフェドカップダブルスのみ出場)。今大会は休養後初のシングルス公式戦であり、7か月ぶりの復帰戦として注目を集めていた。
一年前のウィンブルドンでは、雨天の中、屋根の閉じたセンターコートで6-7(6)、6-3、8-6の大熱戦を展開したクルム伊達とウィリアムズ。それから約8か月ぶりとなるマイアミの炎天下での再戦は、ビーナスの最大の武器であるサーブ……それも194.7キロの高速サービスエースで幕を開けた。
このサーブが、ウィリアムズのこの試合にかける意気込みや、クルム伊達に対する警戒心を象徴していたと言えるだろう。
「彼女はとても才能に恵まれた選手で、対処するのが難しい」。ウィリアムズは試合後に、クルム伊達の印象をそう語る。ウィンブルドンの対戦では、クルム伊達のライジングショットに手を焼き、ウィナーを量産された印象も強かったのだろう。
「攻撃的に攻め、ポイントを短く終えるのが基本的な戦術だった」と言うウィリアムズの意志は、第一セットだけで8本を数えたネットポイントに表れている。リターンでも、果敢に前に出てクルム伊達に圧力を掛け続けたウィリアムズは、第2ゲームをブレークすると一気に加速。第一セットは6-0で先取した。
クルム伊達の逆襲は、第2セット開始と同時に始まった。相手のサーブにリターンのタイミングが徐々に合いはじめ、ウィリアムズの最初のサービスゲームでポイント先行。最後もバックの鮮やかなリターンウィナーを叩きこみ、ブレークでゲームを奪取した。
だが、ウィリアムズは続くゲームでリターンから積極的に攻め、すかさずブレークバックに成功。その後は両者キープが続くが、4-3からのクルム伊達のサービスゲームをウィリアムズがブレークする。このゲームでは、ゲームポイントでクルム伊達にチャンスボールが訪れるが、オープンコートに打ったフォアがわずかにアウトになってしまった。「あのような場面でミスをしては、このレベルで勝つのは難しい」と本人も悔やむポイントが、結果的には第2セットの行方も決めたと言える。このゲームをブレークしたウィリアムズが、そのまま試合をストレートで決めた。
「ウィンブルドンでやったことを踏まえてなのか、リターンから攻撃的に攻め、ダウンザライン(ストレート)にも早く展開された。そのあたりは前回から変わったし、隙の無いプレーを出だしからしていた」と言うクルム伊達の試合後の感想は、「試合の出だしが、とても大切だと思っていた」というウィリアムズの言葉と対をなす。
前回の対戦を踏まえたウィリアムズの、作戦勝ちとも言える一戦。だが同時にそれは、元世界女王のクルム伊達に対する、高い評価と敬意の裏返しでもある。