krumm_date_kimiko120507_2%20.jpgカンガルーカップ国際女子オープン(ITF50,000ドル)は、6日に長良川テニスプラザ(岐阜県岐阜市)で決勝を行い、第1シードのクルム伊達公子(41歳)が6-1、5-7、6-3で勝利し同大会初優勝を果たした。
90年代に世界の4位まで上り詰めた伊達公子が、12年の空白を経て現役復帰し世間を驚かせたのは、2008年4月のこと。選手登録名を“クルム伊達公子”と改め、自ら“チャレンジ”と銘打ったキャリア第2章は、4年前にこの長良川テニスプラザで幕を開けたのだった。
その思い出の地に、クルム伊達が帰ってきた。4年前には世界ランキングも当然なく、主催者推薦枠で予選から出場したが、今回は世界の79位。堂々の優勝候補としての帰還である。


※写真は優勝を決めた瞬間のクルム伊達公子
「4年前とは違い、今回は優勝するつもりで来た」
そう言い切るクルム伊達の覚悟と第1シードの格は、決勝までの足跡にも明らかだった。初戦から準決勝まで全て日本人と対戦し、そのいずれもストレート勝ち。しかも連日の快勝にも関わらず、「まだ課題は多い」と常に自分に厳しくあり続けた。
決勝で対戦したナッパワン・ラーチワカーンは、20歳のタイの新鋭。両手で鋭く振りぬく強打が武器で、タイ育ちらしく高温多湿にも強いスタミナの持ち主である。
雨にたたられたゴールデンウィークの最終日。インドアコートで行われた決勝戦で、立ち上がりから猛攻を仕掛けたのは41歳のクルム伊達だ。得意のライジングショットを早い展開で打ち込み、硬さの見える20歳に考える隙も立て直す暇も与えない。試合開始から20分弱で5ゲーム連取。第1セットは6-1で圧倒した。
第2セットに入ると、徐々にクルム伊達のショットに慣れ始めたラーチワカーンが、逆襲に出る。パワフルなストロークを広角に打ち込み、クルム伊達を左右に走らせ体力を削っていく。約1時間を要した接戦の第2セットを奪ったのは、完全なアウェーにも怯まず奮起したラーチワカーンだった。
スコア的にはまだ互角ながら、若く追い上げる相手に勢いはあると、誰もが感じたこの展開。だがクルム伊達には、経験という大きな武器があった。相手が前後の動きに弱いと見ると、スライスやドロップショット、そしてボレーなどの多彩なショットで揺さぶりをかけていく。「第3セットでは、公子は攻め方を変え緩急をつけはじめた。そして大切な場面で、正しい選択をしていた」と相手も舌を巻く試合巧者ぶりで、再び流れを自分の手元へと手繰り寄せる。試合時間は2時間32分。21歳年少の相手を上回る、心身のスタミナにも恐れ入る。
4年前の復帰戦、クルム伊達は予選から白星を7つ連ね、準優勝という驚異の結果を残した。そして今年、あのとき届かなかった最後の1勝を積み重ね、トーナメントの頂点に上り詰める。
「4年前に出た大会に戻ってきて優勝できるなんて、最高のシチュエーション」
弾けんばかりの笑顔を残し、クルム伊達はその夜には、次なる戦地のフランスへと旅立った。
4年目の原点回帰は、正に最高の再スタートの場となった。