
100回目という節目の大会を迎えた「三菱電機ビルソリューションズ 全日本テニス選手権100th Supported by 橋本総業ホールディングス」(本戦10月5日~12日)。節目の大会を盛り上げるエキジビションマッチが最終日の12日に行われた。
車いすテニスで今年「生涯ゴールデンスラム」を達成し世界1位に君臨する小田凱人と、長年車いすテニスをけん引してきたレジェンドの国枝慎吾さんがペアを組んでセンターコートでプレーする、夢の競演が実現したのだ。

このタッグは小田のラブコールを国枝さんが受けて始まった。それにしても、最強の2人が組んでかなうペアがいるのかと思うが、日本車いすテニス界の層は厚い。
対するのは世界ランク10位の三木拓也と46位の眞田卓。三木はパリパラリンピック五輪で小田と組んで銀メダル獲得しており、23年にはキャリアハイ5位をマークしている。眞田は23年全米オープンのダブルスで優勝しており、キャリアハイは7位。世界の車いすテニス界をリードする選手たちが集結したことになる。

エキジビということで、「最初はマイクを付けてやるという案もあったんですが、お客さんが見たいのはそれではないかなというのと、マイクを付けた場合、笑いを取るハードルが高くなる(笑)」という国枝さんの考えの元、真剣プレーを披露する方向に舵は切られた。
王者の貫禄を見せる国枝さんとピンクのウェアで若さ溢れる小田のペアが、どんなプレーを見せてくれるのか観客は興味深々だった。小田のサービスゲームから始まり、「YOU!」という指示を出し合う様子さえ、何だか特別なように見えてくる。

新旧1位ペアに注目してしまいがちだが、日本トップクラスの三木/眞田ペアは組み慣れていてうまい。三木のタッチ系ショットと眞田のフラット系の攻撃が機能しポイントを取っていく。
国枝さんは途中で「ボールをこっちに集めないでもらっていい?」と真っ向勝負してくる三木/眞田ペアに笑いながら要求。眞田は「新旧レジェンドとの対戦は緊張しますね。あんまりかみ合ってないような感じがするんですけど(笑)」と相手ペアに突っ込みを入れる余裕を見せた。

そして、現世界1位ながら最年少の小田は、「めっちゃ緊張します、めっちゃミスるし」と、迫力あるショットを披露しながも、少しアウトになるなどミスも出た。結果的に三木/眞田ペアがリードした状態で、エキジビの時間は終了となった。
新旧世界1位のペアと日本トップクラスのペアの戦いを観客は楽しんだが、同じぐらい満喫していたのは小田自身だっただろう。他の3人がプレーしているところを見て育った小田は、「(国枝さんに)なんとかプレーしてもらえませんかとお願いして、コートに入った時は普段の試合とは違う高揚感がありました。相手も日本のトップ選手で、全てが揃った環境でテニスができた」と、少年のように目を輝かせた。

国枝さんは「最初にここでプレーしたのは2004年。あれから20年以上たち新しい選手も出てきて、皆さんが車いすテニスを知っていることに感動します」と、取り巻く環境が変わってきたことを喜んだ。車いすテニスの存在を認知してもらう時期は終わり、見て、楽しんでもらう時期に入ったことを印象付けたエキジビとなった。
取材・文/赤松恵珠子、写真/伊藤功巳


