
WTA500「東レ パン パシフィック オープンテニス 2025」が、有明コロシアムおよび有明テニスの森公園コートにて10月20日~10月26日(本戦)に開催された。最終日となる26日はシングルスとダブルスの決勝戦が行われた。
シングルスの決勝戦は、第5シードのB・ベンチッチが第6シードのL・ノスコバに、6-2、6-3で勝利して今季2つ目のタイトルを手に入れた。
2人の決勝戦までの道のりは対照的だった。ベンチッチは3試合中2試合でフルセットを戦い、プレー時間は6時間48分。準決勝後には、まずはリカバリーすると言うほど疲労していた。

対するノスコバは、準々決勝で相手の途中棄権、準決勝も相手が棄権し、プレー時間は2時間39分。フィジカル面に問題はないが、完全に試合ができたのは2回戦のみで決勝の舞台に立つという、あまりない状況に対応する必要があった。
それは、20歳のノスコバにとって難しかったのかもしれない。ブレークポイントを握った時など大事なポイントで、あっさりとミスをしてしまう。
「ブレークポイントを握っても、ベースラインでもネットに出ても自分がしっかりとポイントをコントロールすることができななったし、ボールもコントロールできませんでした。2試合前はできていたので、こういう形で決勝に進むという、自分にとっては違う経験になりました」と、経験のない状況に対応しきれていなかったことを認めている。
実際ノスコバは10回ブレークポイント手にしたが、1度もブレークできなかった。その上、WTAサービスエースランキングで2位に付けているが、この試合ではエースは4本のみで、ダブルフォールトは6つとなってしまった。

サービスが好調だったのはベンチッチの方で、サービスエースは6本あり、特に大事な場面でエースを取れていた。心配されたフィジカル面もできる限りのことをしてリカバリーに努めたようだ。その1つが美味しい日本食だという。
「昨日(準決勝後)はお味噌汁とお寿司を食べました。お味噌汁は最高です。食べた後は身体の状態が良く感じられて、回復に絶対必要だと思いました」と、大絶賛。それでも朝起きた時は、疲労感が残っていたという。
しかし、それは気持ちでカバーした。「コートに立つとアドレナリンが出てきます。自分の意思が、『絶対できるんだ』と身体に言い聞かせてくれたので、今日の結果につながったと思います」。
好調だったサービスにも助けられ、自分から早く攻撃をしかけ、疲労も気持ちでカバーしたベンチッチが、1時間21分で大会を制した。「フィジカル面で厳しいこともありましたが、優勝できてすごく幸せです」と、10年ぶりの東レPPOの決勝の舞台で、今度はタイトルを手にして笑顔が弾けた。

ベンチッチは昨年4月に出産しており、そこからの順調に復帰を果たしている。「ゆっくりと復帰を目指そうという前提でトレーニングを進めた」と、フィットネストレーナーである夫と共に、自分に合ったエクササイズを行い、自然と身体が強くなっていったと言う。
そして、ベスト16入りした今年の全豪オープンと2月のWTA500の大会で優勝したことで、「競技レベルに戻っている。トップ選手たちと渡り合えているなと感じられた」。自信を持って試合に臨むようにしたことで、結果が付いてきている。
復帰する時には「前と同じレベルには戻りたい」という思いがあったベンチッチ。この優勝でランクは11位に浮上する。トップ10入りは目前、そしてキャリアハイである4位を目指していく。
-10月26日(日)の結果-

■シングルス決勝■
〇B・ベンチッチ(スイス)[5] 6-2 6-3 ●L・ノスコバ(チェコ)[6]


■ダブルス決勝■
〇T・バボシュ/L・ステファニー (ハンガリー/ブラジル)[4] 6-1 6-4 ●A・ダニリナ/A・クルニッチ (カザフスタン/セルビア)[3]
取材・文:赤松恵珠子 写真:伊藤功已


