オーストラリア・メルボルンで開催中の全豪オープンは19日に男女3回戦を行い、日本人最高位の森田あゆみが、センターコートで第3シードのセリーナ・ウィリアムズと対戦。セリーナからブレークを奪う健闘を見せたが、1-6、3-6で敗退した。
それまで異様に静かだったセンターコートが、どよめき混じりの大歓声に包まれた。第1セットの第7ゲーム、セリーナの高速サーブがエースとなり、続いて電光掲示板に表示される「207km/h」の文字。女子としては規格外のそのスピードに、観客の誰もがセリーナの強さを再認識した瞬間だ。
だが森田の反撃は、そのしばらく後から始まった。
第1セットはセリーナに奪われたものの、森田は冷静だった。「まずは自分のファーストサーブに集中する。リターンは(コースを)読んで一本でも多く返す。そしてラリーで甘いボールが来たら積極的に行く」という3つの課題を、第2セットの出足から実践する。打ち合いの中でチャンスと見るや、先にコースを変えてウイナーを奪う。
第2ゲームでは、セリーナのセカンドサーブを叩いてラリーの主導権を握り、相手のミスを誘っていった。最後はセリーナのダブルフォルトも飛び出し、森田は今大会、セリーナから初めてブレークを奪った選手となる。さらには続くサービスゲームもキープし、3-0とリードを広げることに成功。ロッド・レーバー・アリーナの真っ青なコートの上に、森田は自分が理想とするテニスを描いた。
しかしここからギアを上げるのが、やはり女王の女王たる所以だろう。
「リターンで構えている時の、セリーナの眼の色が変わっているのが分かった。どちらのサイドからも凄いリターンを返して来るので、プレッシャーがかかり、サーブで力んでしまった」というサーブの乱れを、百戦錬磨の女王が見逃してくれるはずはない。セリーナはまずはサーブでリズムを作ると、リターンゲームでは森田のセカンドサーブを叩き、6ゲーム連取で逆転勝利。マッチポイントを決めたのも、バックの強烈なリターンウィナーだった。
結果としては、森田はストレートで敗れた。だが、この試合で得たものはとても大きい。
「今までテニスをやっていて、一番楽しかった。凄くモチベーションになった」そう言い切る表情から、笑顔と共に充実感がこぼれた。
写真は、第3シードのセリーナに敗退した森田あゆみ
Photo by Hiroshi sato