森田あゆみ(テニス)米国フロリダ州マイアミで開催中のソニー・オープンは23日、女子シングルス3回戦が行われ、森田あゆみが第1シードのセリーナ・ウィリアムズと対戦。試合立ち上がりは3-0とリードを奪うも、逆転を許して、3-6、3-6で敗れ、4回戦進出はならなかった。

「ファーストサービスをしっかり入れること、そしてセリーナのセカンドサービスを叩いてプレッシャーを掛けること」

名実ともに女子テニス界の頂点に君臨するセリーナとの対戦を控え、森田はそのように戦術の一端を明かしていた。

迎えたセンターコートでのナイトセッション、森田は頭で思い描いていたプランを、実際にコートに描いていく。自らのサービスで始まったゲームで、まずは全てのファーストサービスを入れてキープ。続くゲームでは、セリーナの2つのダブルフォルトにも助けられブレーク。その次のゲームでも、ファーストサービスを入れればポイント獲得率は8割を超えた。森田の3ゲーム連取で、第1セットは、3-0の幕開け。詰めかけたファンは女王の思わぬ危機にざわめき、セリーナを後押しする声援が高まった。
 
しかしこの3ゲームの出遅れで、眠れる女王の目が覚める。リードを意識したためか、森田のストロークが「自分から攻めるのではなく、合わせる感じになってしまった」のとセリーナの目覚めが重なったことも、流れの反転を加速させた。セリーナは森田のセカンドサービスを叩いてラリーを支配し始めると、サービスのスピードも確率も急上昇していく。ともすると、そのスピードばかりに目が奪われ勝ちなセリーナのサービスだが、受ける森田は「コースも球種も、トスの位置も変えてきて、後半に進むにつれてどんどんコースが読めなくなった」と述懐する。ストロークにしても「スピードだけならもっと速い選手も居るが、左右に振ってもしっかり質の高いボールが返ってくる」と驚きを隠さない。ネットを挟んで対峙し、セリーナの強さを皮膚感覚で知った森田の言葉は、女王の強さを何よりリアルに言い表している。

同時にそれは、森田がセリーナの本気を引き出したからこそ感じた強さでもあるだろう。ストローク戦では互角に近い打ち合いを見せ、ダウンザラインに展開する得意の形で何度もウイナーを決めた。絶妙なドロップショットやドロップボレーをネット際に沈め、女王を翻弄した末にポイントを奪いもした。今年1月の全豪での対戦では「自分の力が出せたし、通じた部分もあった」と満足そうな表情を見せたが、今回は「持てる力は出せた」と言いながらも、表情や言葉の端々に悔しさをにじませる。

センターコートでセリーナと戦い力を出しきれた経験、そして「課題は分かっている」と語る上昇志向。それらは日本のエースが今大会で得た、何にも代えがたい収穫だ。

写真は、ソニー・オープン3回戦でセリーナに敗退した森田あゆみ
Photo by Hiroshi sato